広告換算以外の手法でメディア露出の効果を測定するための企画書を書きたい!
「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。
広報担当者のための企画書のつくり方入門
「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。 筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。
広報部門の業務にコンテンツ制作が加わることが増えてきた。これまで「コンテンツ」といえばプレスリリース。また外部メディアが自社について報道した映像や記事を「コンテンツ」と呼ぶこともあった。だが社内向け広報に活用する社長メッセージなどを除くと、独自にコンテンツを制作し、社外に公開する機会は少なかった。
ところがプレスリリースやメディア対応に加え、より能動的に多様なステークホルダーと関わり「社会とのより良い関係性」を構築していくこと(本来の意味でのPublic Relations)が広報部門に求められるようになった。自社の公式アカウントなどを通じたデジタルコンテンツの配信も増えたことから、かつては主に広告部門の用語だった「コンテンツ(クリエイティブ)」の制作が広報部門にも欠かせない業務となっている(図1)。
旧来のような社内の「すでにある情報」を社会に発信するだけでなく「クリエイティブ × ソーシャルメディア」などハイブリッドな企画立案能力が日常的に求められるようになった。こうした広報部門の置かれた環境の変化で、広報部門の担当者から「コンテンツ」に関連した相談を受ける機会が増えてきた(図2)。
これまでは、あまり明確なターゲット設定をせずに「社会全体」に向けた情報発信(広報活動)を行ってきた。よりマーケティング戦略と連動した商品PR(マーケティングPR)が必要となったが、どう企画立案したらよいのか?
商品・サービスの仕様や価格を伝えるだけではなく、商品が会社や市場で受け入れられるためにはどういった「社会的文脈」が必要なのか分からない。具体的な「PRストーリー」を考えたい。
自社商品をメディアに提案する際に欠かせない、「伝えるべき理由」を明確にメディアへ示したい。同じく消費者には、なぜこの商品を友人知人にシェアする必要があるのか、動機づけを行い「口コミ」として拡散しやすい「空気づくり」を行いたい。
オウンドメディアで公開するコンテンツを制作しても掲載するだけでは拡散しない。外部メディアでも取り上げてもらい紹介してもらいたい。
社内環境の変化
これまで広報部門は、商品を「売る」という、販売に直結するコミュニケーション活動にはコミットしてこなかった。これからは、これまで以上に「売上」へのコミットが社内から求められている。戦略的に自社商品を「売る」ための世論形成(空気づくり)が必要。
市場の変化
情報過多でモノ余りの時代に、自社の商品は十分に「差別化」されたものとはいえない。市場はすでにレッドオーシャンだ。オウンドメディアのデジタルコンテンツを充実させ、デジタルPRで他社との差別化を図りたい。
コスト削減
広告予算はあまり捻出できないので、できるだけ広告出稿に頼らない方法(パブリシティや口コミなど)にコンテンツを活用したい。
これまであまりコンテンツ制作の経験がない広報部門にとって、コンテンツ制作に携わることには、これまでの業務とは異なる難しさを覚えるかもしれない。困ったときには、「なぜコンテンツをつくるのか」という目的に立ち返り、「誰に、何を伝え、結局どのように動いてほしいのか」を明確にするとよい(図3)。
例えば、BtoB企業などでは、コンテンツへの接触がすぐに「売上」につながるものではないことは誰でも理解しやすい。仮に「見込み客」の獲得が主要な広報目的であれば、自社の商材が相手企業にとってのターゲットユーザーに対していかに付加価値を生み出すことができるのか。この点にフォーカスして「ユーザーの抱える悩み」を解決する付加価値について伝える必要がある。
またBtoC商材を扱う企業の場合、何かの理由で見込み客にとって商品の購買のハードルが高いことが課題であることも多い。まずは購入者の視点に立って購入の障壁を取り払う必要がある。すると制作すべきコンテンツは「購入者のハードルを下げる」ことを目指した内容であるべきである。
こうしてコンテンツ制作の方向性を定めた上で、実際にどういったコンテンツ(文章、動画、写真、インフォグラフィックスなど)を制作することが相応しいのか、どういったプラットフォーム(自社サイト、オウンドメディア、ブログ、SNSなど)に公開するのかを決定していく。
最近では、自分たちが制作したコンテンツ自体をどのようにPRしたらよいか更なる悩みを抱えるケースも増えてきた(プレスリリース、Web広告、リスティング広告、SNS広告、テレビパブリシティなど)。
こうしたポイントを整理して、広報部門がコンテンツの企画制作を行い、自部門から能動的に発信していく上で必要な企画書の書き方について具体的に考えていきたい。
企画書では、最初に戦略に基づいた目的を明確にし、その目的を達成するための目標設定を行う必要がある。例えば、リモート会議をより便利に行える「ウェブカメラ」の販売促進(商品PR)を目的とし、新規顧客1万人の獲得を目標とする、といった具合だ。
目標設定と聞いてまず思い浮かぶのは「KGI」「KPI」という用語だ。KGIは「Key Goal Indicator(重要目標達成指標)」、KPIは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」と訳される。間違いやすく覚えにくいので、「究極のゴール(KGI)」と「小さい(通過地点)目標(KPI)」と、かみ砕いていつも説明している(図4)。
コンテンツを活用したPR活動を企画する際には、まずコンテンツの目的と最終目標は何かを定める必要がある。KGIは、最終目標が本当に達成されたかどうかを計測する指標だ。「いつまでに」達成するのか期限を設ける必要がある。
例えば「新商品の認知度を獲得する」というだけでは曖昧だ。新商品の認知度を獲得することで、店舗とネット販売の双方の売上を促進したいのであれば、KGIはもっと具体的に数値を示す方がよい。
例えば「3カ月後に店舗とネットでの販売数◯◯台を達成する」あるいは「半年以内に1000人の新規顧客を獲得する」と期限を区切った数値目標を設定する。これから制作するコンテンツが“要するに”何を目標としたコンテンツなのかを明確にしたい。
一方、誤解されがちだが、KPIはKGIと異なり「最終目標」のことではない。あくまで「通過地点」を確認するための指標のことだ。「今やること」の指標ともいえる。すでに設定した最終目標(KGI)に対し、どうすれば目標達成が可能となるか。その道標として過程を計測する指標だ。
この通過地点であるKPIと最終目的であるKGIとを混同してしまい、おかしくなってしまうことがある。例えば、ランディングページ(LP)のアクセス数を最終目標(KGI)として設定してしまい、その結果、LPのコンテンツがまだ充実していない状態にもかかわらず、単にアクセス数を上げようと、ネットPRやリスティング広告を活用し誘導にリソースを投入してしまうケースなどだ。KGIとKPIについての関係性の理解が間違っているのだ。
また、SNSアカウントでの投稿数をKGIとして設定してしまった場合などでは...