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SDGs実践! 経営変化と企業コミュニケーション

気づけば選ばれない会社に? 中小企業のSDGs広報

青柳仁士(一般社団法人SDGsアントレプレナーズ代表理事)

長期的な視点での投資が必要なSDGsは中小企業においてコストととらえられがち。しかし企業が継続して利益をあげるために今やサステナビリティは不可欠となってきている。リスク、そしてチャンスに気づき、実行していくための手順と、社内外への広報のポイントを解説する。

2016年の開始以来、SDGsは日本社会において急速に浸透し続けています。2020年、朝日新聞社のSDGs認知度調査では、首都圏において「SDGs」という言葉を聞いたことのある人の数が、聞いたことのない人の数を、調査開始の2017年以来初めて上回りました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の調査によると、すでに9割以上の企業がSDGsに取り組んでいるか、検討を始めています。政府による政策や規制も次々と打ち出され、テレビや新聞などでも頻繁に取り上げられています。

SDGsと中小企業

SDGsの主流化に伴い、ビジネスセクターにおいて企業を取り巻く顧客、取引先、投資家、従業員などの意識にも変化が表れています。企業や商品は従来のように顧客にとっての効用や便益といった経済的な価値のみで選ばれるのではなく、社会や環境に対しての価値を含めた総合的な価値で選ばれるようになってきているのです。

こうした市場環境の変化は、大企業においては、サステナビリティ報告やESG評価といった具体的な規制や市場ルールとなり、確実なものとなってきています。

一方で、中小企業においては、SDGsに関係する規制や社会的な要求は大企業ほど強くありません。そのため、長期的な視点での投資が必要なSDGsの取り組みはコストとみなされ、なかなか行動に踏み切ることができないという声も聞かれます。

こうした状況下、余裕のない中小企業にとって、今すぐSDGsに取り組むべきかという判断は悩ましいところです。しかし、SDGsの潮流が生み出す市場環境変化の影響は実は大企業でも中小企業でも大きく変わりません。中小企業も生き残り、成長し続けていくためには、SDGs潮流の生み出すリスクやチャンスを的確に捉えていく必要があります。

図1 中小企業がSDGsに取り組むべき理由とは?

出所/筆者作成

選ばれる基準の変化

SDGsの潮流がもたらすリスクとは、顧客、取引先、従業員などからの「選ばれる基準」がいつの間にか変わってしまうことにあります。SDGsの潮流を正しく理解していないと、今まで通りに会社を経営し、製品・サービスを生産し、営業努力をし、同じ価格で売っていても、市場競争力は次第に失われていきます。

中小企業の多くは大企業の経済圏に取り込まれているか、少なくとも影響されているため、このリスクは企業の規模に関係ありません。

例えば、トヨタ自動車は2015年に持続可能な社会実現への貢献に向けたビジョンを掲げ、部品や素材の調達先にSDGsやサステナビリティの取り組みを求めました。取引先企業は、その要求に対応するため、その先の取引先に同様の要求をするようになり、連鎖が起きています。トヨタグループだけで影響を受ける下請け企業は4万社近くあります。

同様の動きは、イオンやユニクロなど他業種にも広がっています。末端の先の取引先はほとんどが中小企業です。発信元の大企業と直接関係がなくても、自社のお客さんの先にいるお客さんはこうした動きに関係している場合が多くあります。

また、企業間だけでなく、消費者の間でも、購買行動の決定において社会価値を重視する機運が高まってきています。

SDGsのような社会的課題の解決を考慮し、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら買い物をするという「エシカル消費」は、個人の消費者を中心に徐々に広がっています。企業でなく個人が主なお客さんとなる中小企業は、SDGsやサステナビリティによる市場変化の影響を直に受けることになります。

経営との近さを活かす

チャンスの面に目を向けると、SDGsの潮流を、自社を競合と差別化し、売上向上、人材獲得、業務提携、融資増加などの機会につなげている中小企業もたくさんあります。

小回りの利く中小企業にとっては、ひとたびSDGsに取り組み始めれば、市場変化に適応するスピードにおいて大企業に対する優位性を発揮することができます。

例えば、みんな電力は、従来から電力関連の複数のサービスを扱っていましたが、SDGs潮流の盛り上がりとともに、ブロックチェーンを使った再生可能エネルギーをクラウド上で売買する「顔の見える電力™」というサービスの開発に注力しました。

このサービスは、昨今のCO₂排出削減に関する厳しい規制や目標設定を追い風に、SDGsに取り組む企業から注目を集め、中小企業でありながら再生可能エネルギー取引のビジネスモデルを変え、業界のトップランナーになりました。

中小企業SDGs広報のポイント①

市場変化を経営に組み込むまでのスピードを意識

☑中小企業ならではの経営との近さや小回りの利きを活かし、SDGsの潮流や変化に素早く適応

☑広報は社会の流れを察知し、いち早く新商品・サービスの開発、事業に組み込む懸け橋に
➡そのスピード感で、大企業に対しても優位性を発揮できる

Goodな企業

みんな電力

いち早く新サービス開発に着手、業界のトップランナーに

2016年、電力自由化の開始とともに、SDGsの盛り上がりをいち早く察知し、新サービスの開発に注力。ブロックチェーンを使った再生可能エネルギーをクラウド上で売買する「顔の見える電力™」というサービスを開発した。中小企業でありながら再生可能エネルギー取引のビジネスモデルを変え、業界のトップランナーに。社会ニーズに合わせた先進的な技術開発においても注目を集めている。

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