本物のサステナビリティ経営で企業はどう変わるのか、広報の役割は?
社内に散らばる既存の取り組みを寄せ集め「サステナビリティ活動」と体裁を整えアピールするだけに留まっていないだろうか。環境や社会に配慮したビジネス構造を根本から見直し、サステナビリティを利益につながる事業の本丸とするために、広報ができることとは。
SDGs実践! 経営変化と企業コミュニケーション
1964年創業、4つのブランド美容室を全国展開する田谷。100年企業を目指し、さらなる発展の意味を込め、「Leap(飛躍)」というメッセージをこのほど発信した。そのメッセージのビジュアルに起用されたのが、トランスジェンダーの女性だった。
サリー楓さんを起用したイメージビジュアル。
DATA | |
---|---|
創業年 | 1964年 |
広報人数 | 経営企画本部 マーケティンググループ(計4人) |
▶目標5「ジェンダー平等」など、来店者を誰でも受け入れる美容室だからこそ可能な社会課題に着目
▶顧客のみならず、従業員にも啓もう・鼓舞の意味を込めたメッセージ
▶「女性らしい男性」「男性らしい女性」ではなく、あくまで「素の自分」をコンセプトに企業姿勢を示す
田谷は4月、かねてより行っていたSDGs施策をより発信するために、「SDGsアンバサダー」のポストを立てた。さらに初代アンバサダーにはトランスジェンダー(MtF(*))のサリー楓さんを起用。添えた言葉は「Leap」、日本語で「飛躍」を意味する。本施策の意図とは。
*MtF⋯Male to Femaleを略した言葉で、生まれたときは男性だが女性として生きることを望むトランスジェンダーの人のことを指す。
「当社は、『すべての人に夢と希望を与え、社会に貢献する』という企業理念を掲げています。その“すべての人”というのが年齢、国籍、そして性別で差別をしない、ということです」。こう話すは同社取締役の中村隆昌氏だ。
この理念のもと、2019年から高齢者施設に出向いて美容施術、サロンによっては無料の送迎サービスを行ってきた。「また、障がい者雇用に関しては、厚労省が定める法定雇用率2.3%以上の採用。さらに、全社員のうち6割を女性が占め、そんな彼女らが出産などを機に離職しても、再び働きやすくなるよう『チョキチョキママさん』という制度を設けています。ブランクがあっても再教育して働けるような仕組みづくりです」。
こうした施策はすべて企業理念に通ずる、と同氏。「(企業理念を通じて)『サロンに入ってくる人は絶対に断ってはいけない』というマインドを全社員が持っています」。
人を差別しない、という企業理念を胸に「100年企業」に向けた“意気込み”の意味が本施策の背景にはあった。