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記者の行動原理を読む広報術

今やマスコミ対応は「無駄」? 否、両者それぞれの特徴を掴もう

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

「マスVSネット」。この二項対立はメディア業界では長年の課題に。しかしそもそもその二項対立自体が意味をなさない、と著者。メディア露出、リスク対応。いずれがゴールであろうと、どちらか“だけ”の視点ではもう古い、と話すのだ。

ソーシャルメディア(SNS)の影響力が増したことで、広報の仕事も大きく変わった。SNSを駆使した情報発信や、ネット上に流れている自社のうわさの監視は今や必須だ。オウンドメディアを立ち上げて、独自の記事や動画を配信する企業も多い。マスコミに頼らず、消費者に直接情報を届けたり、対話したりできるという意味で、選択肢は大幅に広がった。

それに伴い、「もはやマスコミ対応は不要なのではないか」という声も聞くようになった。確かにSNSでの情報発信に比べ、新聞やテレビの記者と付き合うのは手間や時間も含め大きな負担だ。しかも間接的な発信になるので、思い通りにいかないことが多い。コストパフォーマンスを考えれば、広報業務はすべてネットで済ませた方がいいのではないか、という意見が出てくるのは当然の成り行きだろう。この問題はどう整理すればいいのか。SNSとマスコミの違いだけでなく、両者の相互関係にも注目する必要がある。

企業規模でまずは判断

まず、規模が小さく、プレスリリースを出してもマスコミに取り上げられたことがない企業について考えてみよう。このケースでは、広報をネット主体にした方がいいかもしれない。本格的なマスコミ対応をするなら専従の広報を置く必要があり、人件費がかかる。それに対し、ネット対応だけなら他業務との兼務や、外部委託も可能だ。実際、そうした業務を請け負うフリーランス広報も増えてきた。

記者クラブに通ってプレスリリースを投げ込んだり、記者に売り込んだりしても、取り上げてもらえなければ効果は「ゼロ」だ。一方、SNSは情報を届ける人数は限られていても、自社に関心がある人だけを囲い込んでピンポイントで情報を伝えられる。その方が効率的だろう。

では、マスコミ対応にも力を入れた方が良いのはどんなケースか。一言で言えば、直接・間接を問わず顧客が多く、一定の社会的責任を負っている企業と、近い将来そうなりたいと考えている新興企業だ。後者は上場を目指している企業などが当てはまるだろう。

そうした企業は、自社にあまり関心がない人も含め「世間一般」に情報を発信する必要がある。この点において、マスコミの力はSNSに比べ圧倒的に大きい。一度に情報を届けられる人の数と幅広さが桁違いだし、やってみるまで成否が分からない「バズり」や「炎上」に比べ確実だからだ。

マスコミ発か?SNS発か?

ネット世論を見ていると、今でも「SNS対マスコミ」という対立構図で捉えている人が多い。しかし...

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