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企業倫理から考える広報

差別に対して自社の理解を表明する時代へ──ナイキPR動画の賛否

杉本俊介(慶應義塾大学)

社会からの信用が問われ、ビジネスに倫理が必要な時代。何らかの葛藤に直面した時、どう筋道を立てていけばいいのか、組織を取り巻く事象から考えます。

広報担当者は人権侵害や差別表現に気をつけなければいけません。しかし、NGワードを踏まないだけの消極的な態度では十分でないかもしれません。SDGsのジェンダー平等、Black Lives Matterなど、差別に対してあなたはどう思うかが問われ始めているからです。去年ナイキジャパンはYouTubeなどでPR動画「動かしつづける。自分を。未来を。The Future Isn't Waiting. | Nike」を公開しました。賛否があるものの自社の理解を明確に表明した一例です。

このPR動画では三人の女性が人種やルーツに対する差別に悩みながらも、スポーツを通して乗り越えていく様子が描かれています。「感動的な映像」「日本でちゃんとマイノリティを扱った素晴らしい作品」「企業がどうありたいかをまっすぐ伝える強い覚悟」と好意的な意見が寄せられる一方、「日本が悪者にされて不快」「もうナイキは買わない」という否定的な反応もあります。賛否を問う前に、この動画が女性と人種やルーツのインターセクショナリティ(交差性)を意識していることは強調すべきです。

そもそも差別とは何でしょうか。差別は区別とどう違うのでしょうか。差別する意図がなかったり、合理的な理由があったりすれば、差別ではないのでしょうか。実は2000年代になって、こうした問いに答えようとする倫理学的分析が盛んに議論されるようになったのです。

現在有力な見解によれば...

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