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実践!プレスリリース道場

ギネス世界記録の認定で商品の魅力を視覚化、ケンミン食品のリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

日本人なら誰もが耳にしたことのある「ケンミンの焼ビーフン」。この商品が「世界で最も長く販売されている焼ビーフンブランド」として、ギネス世界記録(以下、ギネス)に認定されました。そのリリースについてケンミン食品に取材を申し込むと、高村祐輝代表取締役社長と執行役員マーケティング部長の田中国男さんが応じてくれました。

同社は高村社長の祖父である高村健民さんが1950年に神戸で創業。米粉を麺にしたビーフンを日本に定着させた第一人者です。戦後、台湾やアジア各国から帰国した人たちが現地で食べた味を忘れられず、神戸でつくり始めたのがきっかけです。戦争で米の製造が減り、アジアからビーフンに適したインディカ米が入ってきたのも好都合でした。健民さんは台湾出身で、ビーフン工場に勤めたこともあったため、この商材に目をつけました。

一方でビーフンを知らない消費者からは、「どう食べたらいいか分からない」という声が聞かれました。その問題を解消し、味つき・ゆで戻し不要な商品として1960年に発売したのが「ケンミン焼ビーフン」。今回ギネスのロングセラー記録に認定された商品です。

当初はほかにも多数のビーフンメーカーがありましたが、原料の輸入規制により撤退する企業が相次ぎました。同社はタイにビーフン製造を移管し、30年ほど前からは日本で唯一のビーフンメーカーに。現在では日本に流通するビーフンの50%以上を同社が占めています。

ロングセラーを視覚化

高村社長は2年前に父の後を継ぎ三代目社長に就任。広報と広告の違いも分からない状態から、私のPR講座などに参加し、広報を学んでいきました。その中で「自称ロングセラーではなく視覚化できる方法はないか」と考え、ギネス認定を思いついたといいます。

そこから2020年1月の認定までに要した期間は1年以上。ギネスに申請すると、指定の調査機関が調査するほか申請者自身も世界一を証明する資料を提出しなければなりません。『日本食糧新聞』(日本食糧新聞社)の1960年10月に奇跡的に発売記事が載っていたそうです。また、汁なしタイプのビーフンは中国、台湾、インドネシア、ベトナムなど約20カ国のメーカーで発売されており、その中で最も古いことを証明しなければなりません。発売年が不明な企業に電話をかけて確認する日々が続きました。

思わぬ落とし穴もありました。実は高村社長は当初、「ケンミン焼ビーフン」の特徴である味つきタイプのビーフン販売数でギネス認定を狙っていました。ところが、世界で味つきタイプの焼ビーフンを製造しているのは同社だけということが判明。世界にひとつしかなく競合がない商品は、販売数での認定ができないのです。そこで味つきにかかわらず、汁なしタイプの焼ビーフンのロングセラーに方向転換し、無事に2020年1月に認定。4月に正式な認定証が届きました。

「販売数での申請は2年間しか認められず、その都度申請をし直さなければなりません。その点、ロングセラーは記録更新するものが現れない限り使えるので、結果的に助かりました(笑)」。

このギネス認定を受け、2020年4月に配信したリリースをご紹介します。

(ポイント1)当然ですが、タイトルで「ギネス世界記録」や「世界№1」という文字を大きく載せ、ギネスのロゴマーク(ロイヤリティを支払うことで掲載可能)や受賞を祝う写真を掲載。一目で「ギネス世界記録認定」が分かるつくりになっています。

本来はギネスの担当者がイギリスから来訪して授与式を行いますが、コロナの影響で中止となり、代わりに社員が集まって開催したセレモニーの写真をメインにしました。授与式と変わらぬ華やかなムードが伝わり効果的です。

(ポイント2)そして、ギネスの場合は...

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