自然災害による被災の当事者として広報する際のポイント
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震によって、多くの死傷者や家屋の倒壊などの被害が生じました。1月8日には石川県小松市を創業の地とするコマツが義援金総額6億円(石川県5億円、富山県1億円)の緊急支援や、被災地の要請に沿った形で機材を無償貸与することを決定するなど、企業各社が復興に向けて支援する態度を明らかにしています。今回は、震災など自然災害の被害にあったときに広報する際のポイントを解説します。
リスク広報最前線
複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、米ロサンゼルスの港湾で、2021年に入り、綿シャツの輸入が差し止められた措置について、米税関に解除を求めていたが、これが拒否されたことが5月10日付の米国土安全保障省の文書で分かった。対象となったのは、同ブランドの男性用の綿のシャツ。理由は、「中国・新疆ウイグル自治区での強制労働により生産された疑いがある」としている。一方、ユニクロ側は「強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用している」と反論している。
米税関・国境取締局(CBP)が2021年1月にユニクロの一部綿シャツの輸入を差し止めていたことが、5月10日に明らかになりました。ユニクロの製品が「中国・新疆ウイグル自治区の団体である新疆生産建設兵団(XPCC)によって製造された疑いが否定できない」ことを理由とした措置です。新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族に対する拘束や強制労働などの人権侵害問題に関し欧米で批判が高まっている影響を受けたと言えるでしょう。
そこで、今回は、このケースを題材に、人権問題を指摘された際の企業の危機管理広報のポイントを取り上げます。
これまでにも、企業が人権問題に直面したことはあります。広告の内容が黒人差別、ジェンダーの観点から批判されたケースが代表例です。しかし、これらはあくまで広告表現のみに限った問題でした。
今回のケースは、ユニクロの商品、つまり事業内容そのものが人権の観点から問題があるとCBPから指摘されたものです。昨今はSDGsの内容として「つくる責任 つかう責任」「平和と公正をすべての人に」が特に求められています。
また、企業視点で言えば、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」として、企業は売上・利益のみを追求するのではなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮して両立させることまでが求められています。人権問題、特に強制労働の問題が指摘されたときに、これを無視することはSDGs、SXに相反する企業姿勢となってしまいます。
むしろ、人権問題を指摘されたときには、SDGsやSXを意識して企業姿勢や考えを積極的にアピールしていくことが必要です。人権問題にどう向き合うか、についての自社の姿勢や考え、具体的な改善策をうまく伝えられないと、業績やブランドの信用に与えるダメージは大きいことが予想されます。広報の内容は、より一層の慎重さや工夫が求められるのです。
ユニクロの...