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実践!プレスリリース道場

取材のきっかけを誘発 サンコーの「ニュースレター」

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

東京・秋葉原を拠点に便利な生活用品やオモシロ家電などを開発・販売しているサンコー。本連載でも2年ほど前に「糖質カット炊飯器」のリリースを紹介しましたが、今回は同社らしいユニークなニュースレターが届いたのでお見せしたいと思います。

タイトルのないニュースレター

まず冒頭からユニークなのは、ニュースレターにタイトルらしきものがなく、社名と同社アンバサダーであるオスマン・サンコンさんの写真を掲載している点。その理由を広報部長の﨏(えき)晋介さんに聞いたところ、「ニュースレターはすべてメール送付していて、ファイル名を『サンコーニュースレター・世の中にない家電を生み出す』としているので、それで通じると思ったからです」という回答。

メール時代のリリースにはこういう考え方もあるのでしょう。リリースの配信先は1000件以上、そのうち9割はテレビ関係者です。また、配信先のほとんどが過去に取材を受けた面識のある相手という前提もあります。そんな彼らに「うちはこういう会社なんですよ」と改めて伝えるためにまとめたのが、このニュースレターなのです。

(ポイント1)1枚目は企業の特徴を伝え、興味を持ってもらう役割。﨏さんのことやユニーク家電の会社であることは知っていても、毎週2商品をコンスタントに発売していることや、幅広い事業をわずか35人の社員で展開していることは知らない人も多いのではないでしょうか。


注目は、売上高が2016年の10億円から、2020年には30億円(予測値)に急成長している点で、改めて取材したいと感じる記者もいるはずです。販売は2軒の実店舗のほか自社ECサイトを柱に展開しており、コロナ禍によって外出を控えた消費者からのアクセスも急増したようです。

リリースでは、毎週2商品を開発し続けられる仕組みにも触れています。同社では、社員とアルバイトの全員がアイデアを週に1つずつ電子掲示板に書き込むことを習慣づけていて、アイデアが活かされると2000円~1万円の報奨金が出るのです。

「“この動作がもう少し楽にならないか”といったゆるい提案でいいんです。日常の中にヒントがあるので、全員が意識して生活するようになりますね」と﨏さん。そうして集まったアイデアを商品企画部がブラッシュアップし、改善しながら発売にこぎつけるプロセスまで書かれており、メディアとしてはその舞台裏を取材したくなります。

(ポイント2)2枚目ではメディアに向けた取材体制が整っていることを伝えています。商品の解説役として、﨏さん扮する名物キャラクター「ekky」も稼働できることを説明。「テレビに出るのが好きなので、ちゃっかりPRしています」と笑いますが、タレントを用意せずに済む人材はメディアにとってありがたい存在なのです。


実店舗が2軒あることも大きな強みです。ユニークな商品が所狭しと並ぶ店内などの魅力的な画が撮れることは、テレビにとって必須条件だからです。ユニークなのが、最下段に書かれた「撮影用マンション」の存在。なんと店舗近くにワンルームマンションを借り、ダイニングテーブルやローテーブル、折り畳みベッドなどの簡易家具を設置。店舗取材で気になった商品を持ち込んで撮影することが可能です。

これは広報が盛んな企業でもあまり例がなく、取材者側が助かるとともにサンコーにとっても実機を貸し出す手間が省けるのでメリットが大きいのです。そもそも「自社サイトの撮影にスタジオを借りるより便利だから」と借りた部屋でしたが、メディアに貸すようになると、週に2回ほどコンスタントに使用されているそうです。

(ポイント3)3~4枚目ではヒット商品24品の写真を一覧で並べ、取材できる商品のバリエーションを伝えています。特に売れている...

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