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社会の変化に対応する「状況判断」力

なぜ「パーパス」「従業員エンゲージメント」に関する取り組みが必要か

片岸雅啓氏(経済産業省)

企業の存在意義(パーパス)が社内に浸透しているか。企業が目指す姿に、個々の従業員が共感し、貢献する意識を持っているか。社内のコミュニケーション活動と表裏一体であるこうした視点は、日本企業全体の持続性にも大きく関わっている。

──産業人材課が実施している有識者や実務家との研究会では、パーパスや従業員エンゲージメントに関して、どんな議論がなされていますか。

産業のグローバル化、デジタル化、個人のキャリア観の変化などに伴い、日本企業を取り巻く環境は変化しています。その中で、持続的な企業価値向上の観点からも、いかに働く「人」の価値を最大化するか、は重要な課題となっています。

新型コロナウイルスは、この議論を加速させました。例えば、在宅勤務でプライベートなエリアを侵食してまで仕事をする状態が続けば、当然「なぜ働いているのか」「自分の仕事は社会にどう還元されているのか」と考える時間も出てきます。

このような問題意識から、求められる雇用コミュニティの変化を含めた人材戦略の変革の方向性などについてまとめました(図1)

図1 雇用コミュニティの変化

出所/経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」報告書

社会的な意義が問われる背景

国際的な流れを見ても、株主利益を第一とする考え方を転換し、従業員をはじめ顧客、地域社会など、複数のステークホルダーに配慮する考え方が重視されてきています。

例えば、世界最大の資産運用会社、ブラックロック社のラリー・フィンク会長が世界中の経営者に向けてこんな年頭書簡を発表しました。「企業の継続的発展のためには、業績のみならず、社会にいかに貢献していくかを示す必要がある」(2018年)、「企業がその存在意義を真に理解して行動に移せば、それは長期的な収益力の向上をもたらす行動規範として機能し、経営陣や従業員、地域社会の結束を強固なものにする」(2019年)。

つまり、企業は見かけの業績ではなく、社会における存在意義(パーパス)を掲げ、具現化しなければ、中長期的に持続できない。そんな考えが、様々なところから問われているのです。

──企業のパーパスの浸透と従業員エンゲージメント向上はどのように関係しているのでしょうか。

多様な従業員が集まる企業の経営トップが、積極的に...

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