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広報担当者のための企画書のつくり方入門

ステークホルダーと良好な関係を築くための広報企画書の書き方

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

社内からの思わぬ「反対の声」とは何か?

顧客、従業員とその家族、株主、取引先、地域住民⋯⋯多様なステークホルダーとの間に良好な関係を築くコミュニケーション戦略(ESG経営やSDGsに関連した取り組み(*)など)を社内に浸透させようとすると、役員や他部署から思わぬ「抵抗」を受けることがある。私の経験上、大きく2つのタイプがあった。一つは「販促優位」という立場からの意見。もう一つは「広報活動の必要性」への疑問だ。

※SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」と呼ばれている。2015年の国連サミットで採択された。国連や政府だけでなく、企業や個人も含めた取り組むべき課題が定められている。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)Governance(ガバナンス=企業統治)の3つを合わせた言葉。企業の将来性と持続性などを分析・評価して、投資先企業の選別を行う際に用いられる視点。これまで重視されてきた企業業績や財務情報だけでは、企業の長期的な収益性(持続性)について判断することは難しいと考えられるようになった。このESGを意識したESG経営に注目が集まっている。

前者は、「ステークホルダーとの良好な関係」の重要性は分かるが、今は「売上に直結する販促プロモーション(商品PR)をもっと重視してくれないか」「人手が足りない。やるならば広報部門でやってほしい」という趣旨のものだ。

後者は、BtoB企業や大企業の100%子会社などの役員から声が挙がることが多い。「そもそも、コンシューマー向けの商品を販売していない自社が、どうしてPR活動を積極的に行う必要があるのか」「役員と営業部門が親会社や株主とコミュニケーションが取れていれば十分」というものだ。

広報部門が社内提案をする際に、こうした反対意見が出にくくするには、どのような配慮が必要になってくるのだろうか。8つの視点から見ていきたい。

視点1
客観データを用いる

企画書の「神」は細部に宿る

「社会的価値(意義)」があると思われる活動を社内に提案する際、客観的データの提示が弱くなる傾向がある。「社会的に重要だから分かってもらえる」という思いが無意識のうちに先行するからだ。他部門に理解してもらうためには、客観的データの明示を忘れないようにしたい。有識者による公開ディスカッション(例:ダボス会議)の資料から様々な角度の客観的データを拾い、一次情報にあたるという方法もある。企画書内の「数字」にはしっかりとした裏付けを付したい。

視点2
トレンド(世界の潮流)を説明する

「木を見て森を見ず」にならないために

日頃、重要なクライアントとのビジネス交渉に追われている部門、あるいは生産工程や、販売管理上の現場情報に触れている部門などでは、どうしてもグローバル経営や企業ガバナンスの話のアップデートは遅くなる。だが社会のトレンドとして、ESG経営やSDGsが浸透しつつあることを、企画書内における前提条件として必ず触れておきたい。

SDGsに積極的に取り組んでいる企業に、投資家たちは積極的な投資(ESG投資)を行っている。すると、企業はSDGsに基づいた事業活動に、より取り組めるようになる。この大きく循環するダイナミズムを、社内外のステークホルダーに理解してもらうことが重要だ(図1)。

図1 SDGsとESGの関係

「初めてのチャレンジ」にも先行事例を知りたがる

社内を「説得」する際に欠かせないのが「先行事例」の紹介だ。「初めてのコト」にチャレンジするのにも関わらず「先行事例」の紹介を求められることには、やるせなさを感じるが、類似した事例が明示できるとイメージもわきやすい。

私は、よく米コカ・コーラの「Refresh the World. Make a Difference:The Coca-Cola Company」(公式YouTubeで配信)という動画を、企画書を提示する前に見てもらうようにしている。同社のパーパス(社会における存在意義)「Refresh the World, Make a Difference」が、多くのステークホルダーとともに成し遂げられていることを分かりやすく可視化したこの動画は、広い視野を持つきっかけになる。

視点3
「差別化」を強調する

コストセンターからプロフィットセンターへ進化する広報部門

これまでの企業による社会参画は「本業による利益をいかに社会に還元するか」という視点だった。また自社の「善意」をあまり広報活動に利用しない傾向があった。これは「善意は必要以上に目立たない」ことが“美徳”とされる日本ならではの風潮によるものだ。

しかし、最近はベンチャー企業など中小企業の経営者などから、ステークホルダー(社会)への貢献を強く意識したコミュニケーション戦略の立案サポートの依頼が多い。時代の潮目に鋭い嗅覚を持つ経営者の多くは、技術的な進歩や、ビジュアル、デザインの洗練化だけでは他社と差別化戦略が難しいことを肌で感じ、どうやったら「顧客」を含めた「社会全体」に響くコミュニケーションになるのかに注目している。

自社や自社商品の「独自のウリ」(USP=Unique Selling Proposition)として、「ステークホルダーに貢献する事業展開を積極的に行いたい」「社会にとって自社が有益であることを示したい」という思いは経営層に根付きつつある(図2)。

図2「差別化」に対する経営者の意識の変化とコミュニケーション

Step1 商品やブランドのUSPをコミュニケーション

●商品スペックを訴求しても差別化ができない

●価格はこれ以上値下げできない

●チャネル(販売拠点)はもう増やせない

●現在以上の宣伝予算は難しい

➡既存のマーケティングフレーム(4P)の閉塞感

Step2 企業目線から社会全体の目線へ

●外部リサーチにより、自社の置かれた環境や課題は把握

●課題は分かっても解決方法が分からない

あと60%

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