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通巻150号記念

危機管理広報が企業を助ける~広報力で企業に差はついたのか?

浅見隆行

不祥事発覚後、レピュテーションを回復した企業と、できなかった企業。二分化する背景には、どのような広報活動があったのか。本誌連載でリスクマネジメント事例を解説してきた弁護士の浅見隆行氏が振り返る。

信頼回復のための広報活動とは?

組織ぐるみの不正会計、データ改ざん、個人情報漏えい、企業秘密の持ち出し、ハラスメント、過労死、食品への異物混入、リコール隠し、広告の不当表示、広告やSNSの炎上、内部通報への不利益取り扱い⋯この10年間だけでも企業が直面した不祥事はあまたの種類が挙げられます。

タカタのように倒産しなければならなくなった企業がある一方で、マクドナルドのようにダメージからのV字回復を果たした企業もあります。

この差はどこにあるかというと、もちろん不祥事によるダメージの大小の差、危機発生後の経営判断の的確さの差も一因ですが、危機管理広報の巧拙も一因として挙げられます。

危機管理広報を成功させたことで不祥事の影響を最小限度に留め、今につながっている企業も少なくありません。

倒産に追い込まれた理由

危機管理広報に失敗した最たる例がタカタです。

2000年から2008年に製造出荷したエアバッグに不具合があり、2004年には社内試験でエアバッグの異常破裂の兆候を把握していたにもかかわらずデータを消去し、部品を処分するなど隠ぺい。ところが、2014年11月に行われたアメリカ議会による公聴会では隠ぺいを否定し、原因が特定されていないことを理由に全米を対象にしたリコールも拒否していました。

ただアメリカ国内で集団訴訟が提訴され、また自動車メーカー各社がリコールを先行実施したことから、2015年5月に一転して欠陥を認めリコールを実施。自動車メーカーが立て替えたリコール費用など負債総額が1兆824億円にも達したことから、2017年6月に民事再生を申し立て、倒産したというものです。

危機管理広報の面で失敗と言えるのは、高田重久会長兼社長が2014年11月の公聴会に姿を見せず、2015年6月まで表に出てこなかったことや、死傷者が発生しているにもかかわらずリコールを拒否したことです。これらの対応から、トップが逃げているイメージ、消費者の安全を軽視している会社とのイメージがついてしまったことで、消費者・取引先・社会すべての信頼を失ったのです。

危機が発生したとき、企業が損害賠償やリコール費用などの危機そのものによるダメージを負うことはもちろんです。しかし、それ以上に、連日メディアやSNSで取り上げられることでレピュテーションが低下し、それによって、消費者や取引先、従業員、社会が離れ事業が成り立たなくなること、上場企業であれば投資家に見捨てられ株価が下落することが、企業再建の足を引っ張ります。こうしたレピュテーションの低下を防ぎ、消費者や取引先、社会、従業員からの信頼をつなぎ止め、投資家からの信頼を維持するために危機管理広報が役に立つのです。

安心・安全の信頼を取り戻す

成功例の代表格はマクドナルドです。2014年7月、中国の食品加工会社が使用期限切れの鶏肉が混入したナゲットを製造していたことが...

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