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トップの言葉で心を揺さぶる 広報の準備力

トップが取材を受けたがらない、補足資料って何を送れば…? メディア対応Q&A

五十嵐 寛(ハーバーコミュニケーションズ 代表取締役)

社長取材、記者会見などのトップが発信する場においての広報のお悩みに、メディアトレーニングのプロである筆者がQ&A形式でお答えします。

    Q1 おしゃべりでリップサービスしがちな社長に対して、どのように、らしさを崩さずコントロールしたり、伝えていけばいいか分かりません。

A おそらく伝えたい、教えたい、相手に喜んでもらいたいという気持ちが強い社長さんなのでしょう。確かにそういった人間味を抑えてしまうのは勿体ないですね。まずはその旺盛なサービス精神を尊重しましょう。その上で、一般的に記者・ライターは結論を先に聞きたがり、できるだけ簡潔な話を求めていることを教えてあげると、そのほうが記者にとって嬉しいことだったのか、と気づいてもらえるかも知れません。

リップサービスということですが、単に耳障りのいい言葉を並べる程度ならそれほど気を揉む必要はないでしょう。それよりも、本来話すべきではない事柄を、相手が喜ぶと思ってついつい話してしまう……いわゆるオフレコ話をするようなら問題です。「記事になって困るような話はしない」というのが原則です。

それに、オフレコ話は記者・ライターにとって、聞いたところですでに知っていたり、つまらなかったということも多いと聞きます。また、今後その関連の話を書きにくくなるといった弊害もあり、実はあまりサービスにはなっていないようです。こうしたことも機会を見て伝えていってはいかがでしょうか。

    Q2 社長が取材を受けない、人前に出るのが苦手です。広報としてできることはありますか?

A そういう社長さんは少なくないですね。以前取材を受けて嫌な思いをしたという方と、ただ単に食わず嫌いのような苦手意識を持っている方に大別できるかと思います。

前者の場合、「言ってないことを書かれた」「言葉を切り取られて本意とは違う書かれ方をした」といった不満を持っていることが多いようです。この場合は少し楽です。まず、取材にくる記者の意図、書こうとしているストーリー、その中にあてはめようと狙っている社長のコメントは何か、ということを広報が事前に記者本人から聞き出したり、精緻に予測することが重要です。

そして取材の前に社長さんと広報とで綿密な打ち合わせを行い、記者が聞いてくる重要な質問に対し、どう回答すればいいかをすり合わせておきます。これをやっておけば、100パーセントではありませんが、かなりの確率で「思ってもいない記事」がでることは回避できるはずです。社長さんも次第に狙った記事が出ていくことに手ごたえを感じ、嫌悪感も薄れていくでしょう。

問題は後者です。社長は会社の顔だから、取材対応は社長の義務などということは、恐らく分かっていらっしゃるはずです。分かっていても嫌なのです。そうした方には“外堀作戦”をおすすめします。社長と近い他の役員に順次取材を受けてもらい、その記事が出たことによる公私両面の反響(顧客からの問い合わせが早速入った、学生時代の友人から久しぶりに連絡があった、娘さんから「あんな風に記事になるなんてお父さん案外すごいんだね」と言われたなど)を、それとなく伝えてもらうといった具合です。

最初は尻込みしていた社長さんでも、何度かそういう話を聞くうちに、次第に重い腰を上げてくれるものです。そして社長さんの記事が出た暁には、広報はもちろん、秘書や役員らからも記事を見たことや感想などを社長さんに伝えてください。それがまた次の取材OKにつながることでしょう。

    Q3 根拠を説明できないのに「No.1」と言いたがる……などメディアから敬遠されがちな発信をしてしまう社長に、どのようにアドバイスするのが適切ですか?広報が原稿をしっかり用意するべきなのでしょうか。

A まずどういった発信が敬遠され、または喜ばれるかの線引きを示すことでしょう。ご質問にあるようなファクトベースに聞こえない話、自画自賛や我田引水のような話は記事にはなりにくいですしコメントとしても引用されにくいものです。そうではなく、例えば「現状分析」⇒「課題抽出」⇒「問題解決」を具体例やデータなどを用いて簡潔に話せば、経済記者なら真剣に耳を傾けてくれるはずです。

取材前の打ち合わせ時に、想定問答の確認を行うと思います。回答の部分に、こうした望ましい発信方法を明確に示し、避けてもらいたい発信方法を併せて説明することで、必要なアドバイスはできるのではないかと思います。

原稿があった方がいいかどうかは社長さんのパーソナリティによる部分が大きいでしょう。きっちり原稿があった方がいい人、キーメッセージを3つ程度整理しておけばそれで充分という人など様々です。まずは社長ご本人と...

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