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トップの言葉で心を揺さぶる 広報の準備力

トップ会見の露出増やすコツ、それは社長が自分の言葉で語ること

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

コロナで先行き不透明な中、トップのメッセージが今、求められている。さらに原稿を単に読むのではなく、社長自身の言葉が入っていればなお良い。記者に傾聴してもらえる、そんなスピーチを社長に語ってもらうのも広報の務めだ。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まって1年が過ぎたが、出口が見えない状況はいまなお続いている。2021年度は企業にとって、コロナ禍で変わった社会を前提に、どこまでビジネスモデルを再構築できたかが問われる年になるだろう。

こうした時期に、マスメディアのニーズが高まるのがトップインタビューだ。読者・視聴者に対し、社会のリーダーたちが現状をどう判断し、どの方向に舵を切ろうとしているのかを端的に示せるからだ。年度替わりの4月や、新社長の就任が相次ぐ6月ごろには、例年にも増してテレビや新聞でインタビューものが増えるはずだ。今回は、記者がトップインタビューでどんな回答を求めているのかを解説しよう。

社長はオーケストラの「指揮者」

企業のトップに限らず、記者が組織のリーダーに話を聞くとき、最初に注目する点は共通している。「自分の言葉で語っているかどうか」だ。

記者会見の中継などを見れば分かる通り、リーダーには2つのタイプが存在する。カンニングペーパーをなるべく見ずにアドリブで話そうとする人と、すべて台本や想定問答集の通りに受け答えする人だ。オンレコのインタビューでもこの傾向は変わらない。

広報からすると台本通りに話してくれる方がありがたいだろう。しかし、記者は「トップとしての仕事をしていない」と受け止める。指導力に疑問を持ってしまうのだ。

そもそも想定問答集の回答例は、ホームページやプレスリリースを読めば分かることや、広報に問い合わせれば教えてもらえる情報がほとんどだ。内容自体は、わざわざトップに聞かなくても良いのである。

もちろん、それでも「トップ自身が口にする」ことには特別な意味がある。不祥事会見で社長が出てきて頭を下げるのと同じ理由だ。だから記者は、台本通りの受け答えしかしなくても記事にはしてくれる。しかし、扱いは小さくなりやすいし、記者のトップへの評価は下がる。記事を読んだ人の評価も高くはならないだろう。

これは、オーケストラの演奏を思い浮かべれば分かりやすい。どんな曲であれ、それぞれの楽器がどういう旋律を奏でるかについては楽譜に細かく指定されている。その意味では、ベートーベンの「運命」はどのオーケストラが演奏しても同じ曲だ。パソコンの音楽ソフトに楽譜のデータを打ち込んでも同じ「運命」を聴くことができる。

それにもかかわらずコンサート会場に足を運ぶのは、オーケストラの演奏は指揮者によってまったく違ってくるからだ...

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