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疫病と広報史

広報の失敗が不信を招く─ 炭疽菌事件と危機管理広報

国枝智樹(上智大学)

私たちに大きな影響を与えている「疫病」。海外の疫病にまつわる歴史的な出来事から、現代に通じる「広報」の意義や役割について紐解きます。

「適格な人物が適切なタイミングで発した適切なメッセージは命を救うことができます」。これは米国疫病対策予防センター(CDC)が公表したガイドライン「クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション」()に記されている言葉です。ガイドラインによると広報は疫病を含む危機への対応において最も重要な役割であり、人々の信頼と協力を得るためにも広報担当者には危機に対する専門的な知識だけでなく広報そのものの知識や技術が求められます。

*Centers for Disease Control and Prevention. CERC.
https://emergency.cdc.gov/cerc/ppt/CERC_Introduction.pdf
https://emergency.cdc.gov/cerc/ppt/CERC_Spokesperson.pdf

実際、新型コロナに関する記者会見でも首相や知事とともに公衆衛生の専門家が登壇し、記者に対応することは珍しくありません。科学的なデータに基づき説明することで感染予防に対してより多くの人から協力を得ることができると考えられます。

CDCのガイドラインには他にも迅速かつ正確に情報を共有すること、共感を示すこと、行動を促すこと、といった原則を中心に、多くの広報上のポイントが記されています。このガイドラインを作成する大きなきっかけとなったのは炭疽菌事件です。

広報の失敗が信頼を失う

炭疽菌事件は2001年...

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