広報活動には、新しいメディアが積極的に使われています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。
2021年1月下旬、音声SNS「クラブハウス(Clubhouse)」が突如、日本で話題を集めました。特定の趣味や学びなどに特化した交流が盛んに行われている一方、様々な企業の広報担当者や採用担当者が集まって、傍観者も含めて相互フォローしているさまは、異業種交流会における名刺交換そのものです(*1)。
*1 2000年代なかば、mixiのコミュニティで同業種や異業種の交流会が活性化していたのを、真っ先に思い出しました。iPhoneの連絡先リストに登録されている電話番号で招待できるという仕組みによって、近年あまり連絡をとっていなかった人ともつながりやすいため、とくに40代以上の利用者であれば、mixi以来の旧交を温めたという相手もいるかもしれません。
コロナ禍にあって(筆者自身を含めて)多くの人々が雑談に飢えていたのだなあ……というのが、率直な第一印象でした。オンラインの会議や飲み会では、ネットを介して“つながっている”という感覚はあっても“集まっている”という実感は抱きにくいものです。
というのも、Zoomをはじめとするビデオ会議システムの場合、複数人の声が重なると聞き取りにくくなりがちです。飲み会のようにくだけたシチュエーションでも、声がかぶらないようにひとりずつ発話するのが一般的なので、大勢での雑談にはあまり向いていません。また利用者のPCやスマートフォンのマイクの性能に音質が大きく依存するため、つい声を張ってしまいがちで、長時間の会話はずいぶん疲れます。
それに対してクラブハウスは、複数人が同時に発話しても、それほど聞き取りづらいということはありません...