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70歳現役社会が到来 働き方、ライフスタイルはどう変わる?

陣内真紀氏/神下敬子氏/徳岡晃一郎氏

70歳までの就業機会確保が努力義務となる2021年。60代以上の働き方やライフスタイルに注目が集まりそうだ。ここでは、アクティブシニア社員制度を導入するファンケルの広報、60代向けファッション誌『素敵なあの人』の編集長、ライフシフト社CEOが語り合う。

    70歳現役社会が到来

    2021年4月、70歳までの就業機会を確保する「改正高年齢者雇用安定法」が施行される。65歳までの雇用確保(義務)に加え、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務を新設した。❶70歳までの定年引上げ❷定年制の廃止❸70歳までの継続雇用制度の導入❹70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入❺70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入。

    年齢にかかわりなく活躍できる環境が整備される中、企業がアクティブシニア社員の価値を伝える機会や、60代以上を魅力的なターゲットと据えた商品サービスの訴求も増えていきそうだ。今後、どんな情報の切り口が共感を集めていくか、座談会で掘り下げていく。

ファンケル
経営企画室 広報部 主査
陣内真紀(じんない・まき)氏

1998年、ファンケルに入社。化粧品の商品企画に携わった後、雑誌、美容専門家などを対象にした商品PR業務を担う。2015年より現職。企業および商品の広報全般に従事する。

宝島社
『素敵なあの人』編集長
神下敬子(かみした・けいこ)氏

商社のアパレル担当、外資系ファンドのコンプライアンスを経験した後、ライターに転身。ビューティーやファッション関連本などに携わる。実用書編集部員を経て、2016年宝島社に入社。ファッション、インテリア、家事、健康など様々な分野の書籍を手がけ、2017年から現職。

多摩大学大学院
教授/ライフシフト CEO
徳岡晃一郎(とくおか・こういちろう)氏

日産自動車人事部、欧州日産などを経て、フライシュマン・ヒラード・ジャパンにてシニアバイスプレジデント/パートナー。2006年より多摩大学大学院教授を兼務し、研究科長などを歴任。還暦を機に2017年ライフシフト社を創業、ライフシフト大学を開校。

60代以上が活躍する時代に

陣内:ファンケルは2017年、65歳以上を対象にアクティブシニア社員という雇用区分を設けました。本人の希望と会社のニーズが一致すれば、何歳でも働き続けられる制度です。2020年に定年制度を60歳から65歳に改訂し、定年後にアクティブシニア社員へ移行します。ただし、60歳以降でフルタイムの業務が難しいという場合、一度退職し、その後嘱託社員として再雇用した後、アクティブシニア社員へという選択も可能になっています。現在アクティブシニア社員は男性4名、女性10名。全従業員が対象なので、パート社員も制度を利用できます。

神下:宝島社の『素敵なあの人』は2019年9月、初の60代向け月刊誌として創刊しました。今の60代は若い時、『anan』『non-no』が創刊し、ファッション誌と共に育ってきた世代。とにかくおしゃれです。しかしお手本となるような雑誌がない。これが創刊の経緯です。創刊以来3号連続で完売し、「ここに市場はある」と確信しました。美容やファッションに対する読者のお悩みは深いのです。

これまで60代以上というと、終わった世代と思われていましたが、お金も時間もある60代は、魅力的なターゲット。にもかかわらず、読者から「自分のための商品がない」という声が届きます。これは、企業が行っているコミュニケーションが、読者世代に届いていない表れだと思います。

徳岡:2017年にライフシフト社を創業し、中高年の学びの場をつくっています。還暦を目前にした2016年、リンダ・グラットン著の『LIFE SHIFT』を読んだところ、私の世代は94歳まで生きると予測されていました。正直、後35年もあるのか、と恐怖を感じました。今の40、50代も同じように年を取り、働かない人が増えていけば、確実にまずいことになります。そこで創業し、50、60代の人が学べるライフシフト大学をつくりました。

働くためには知の再武装をして、時代の変化に応じた学びを続けなくてはなりません。また多摩大学大学院でも、社会人向けに教えています。こちらは40代が中心。人生の選択について考える機会をつくっています。

2017年4月、ファンケルがアクティブシニア制度の導入時に発表したリリースでは「一生涯輝ける職場づくりへ」がキャッチフレーズに。社員が夢を持って働ける会社にするという人事理念をもとに、新たな雇用区分を構築したことを紹介(定年制度は2020年改定)。右の写真は制度を利用している社員の様子。

若い世代からどう見られるか

──60代以上のライフスタイルや働き方に対する意識の変化をどう捉えていますか?

陣内:実際、アクティブシニア社員として働いている人に話を聞くと、「社会とつながり続けたい」というのが、制度利用の主な理由になっています。もちろん経済的な部分もあるとは思いますが、人とつながることで、新しい自分を発見できているようです。制度発表後、取材の依頼も多く、該当社員に登場してもらっています。社外の方からは「本当に楽しそうに働いていますね」という声をいただきます。意志を持って楽しく働くことが、自信や周りへの活力につながっているのでしょう。

アクティブシニア社員の活躍の場の一つとして、コールセンタ―の対応があります。百人お客様がいたら百通りの対応があると言われる領域ですので、経験値や体験談から後輩社員は学ぶものがたくさんあります。これは会社としても大きな財産となっています。

徳岡:働けるうちは働きたいという欲求は高まってきていると、学生を見ていて思います。ところが、いざ一歩踏み出すとなると、ファンケルさんのように制度が整っている会社ばかりではありません。ここにPRの余地はあると思います。一つの会社にとどまろうとする人もいれば、早めに人生の変化を起こすために、自分の市場価値を診断し、新たなキャリアを探そうとする人もいます。

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