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固定観念を揺さぶることで新しい企画を生み出そう!

安斎勇樹(ミミクリデザイン CEO)

商品・サービスのコミュニケーションにおいて、社会との接点を考える視点は欠かせない要素だ。本稿では、従来の「固定観念」を揺さぶり、今の社会にマッチした価値観を生み出すポイントを解説。広報・PRを行う上での新しい企画発案の参考にしてもらいたい。

「考えても考えても、なかなか良いアイデアが浮かばない」「何度会議を繰り返しても、同じような意見が飛び交い、ブレイクスルーが起こらない」。新しい企画を生み出すプロジェクトにおいては、このような悩みがつきものです。

この背後には、アイデア発想の最大の敵である「固定観念」の問題が潜んでいます。革新的な企画を生み出すためには、市場でも競合他社でもなく、自分自身が暗黙のうちに形成した「凝り固まった考え方」を揺さぶり、現状を打破する新しい価値観への転換をつくりだすことが肝要です。

しかし「固定観念を揺さぶる」とは言うは易し、現場で実践するためには、正しい戦略とテクニックが必要です。

“カーナビ”を取り巻く固定観念

固定観念の厄介さについて考えるために、筆者が以前にファシリテートしたある自動車メーカーの「カーナビ」を開発する部署のプロジェクトの事例をご紹介しましょう。

昨今「自動運転」の技術が進み、ドライバーにとっては運転機会そのものが減っていくことが予想されています。これは「カーナビ」の開発チームにとっては、気が気ではありません。

危機感を覚えたトップの指令で、社内では「人工知能(AI)を活用した未来のカーナビ」のアイデアを考える企画会議を繰り返していたそうですが、なかなか良いアイデアが生まれません。そこで、筆者のもとへと「会議のやり方がうまくいかないので、ファシリテーションをしてほしい」と、相談があったのです。

このチームが企画に詰まっていた要因は、言わずもがな、会議のやり方ではありませんでした。以下のようないくつかの強固な固定観念が、新たな発想を阻害していたのです。

●カーナビは、運転者のためのものである。

●カーナビは、タッチパネルの使いやすさが重要である。

●カーナビは、自動運転技術とともに、進化しなければならない。

●カーナビは、これからも永劫「必要」なものである。

このような固定観念を「揺さぶる」というのは、簡単なことではありません。その理由は、固定観念のメカニズムに隠されています。

固定観念のメカニズムとは?

固定観念は諸悪の根源のように語られますが、多くの場合、実は「昨日までうまくいっていた、現場の鉄則」「自分たちの歴史を支える、重要なアイデンティティ」のようなものです。

カーナビのつくり手たちが、初めから「カーナビなんて、必要ないのでは?」と疑っていては、真剣に事業に取り組めないでしょう。プロダクトの可能性を心から信じ、メインユーザーである運転者のニーズに寄り添い、インターフェースの細部にこだわってきたからこそ、競争優位性を保つプロダクトづくりができていたわけです。

このように明日のイノベーションの大敵である「固定観念」は、昨日までの「組織と事業の基盤」でもあるのです。これらを安易に揺さぶるということは、自分たちの足場が崩れることにもつながりかねません。

したがって、日常のアイデア発想において実践するには、現実的な揺さぶりの塩梅が重要になります。筆者は、発想に影響を与える固定観念のメカニズムを、氷山に見立てた4階層のモデルで捉えています(図1)。

図1 固定観念のメカニズム(思考の4階層モデル)

出所/筆者作成

水面から上に浮かび上がっている「思考」とは、日々頭の中に自然と浮かびあがる考えのことです。新しい企画を生み出すためには、思考の質を変えなくてはいけません。日々の思考は、ちょっとしたきっかけで変わることもあるでしょうが、人によってなかなか変えられない「思考の癖」のようなものあるでしょう。

最も深層にある「信念」とは、何を正しいと信じるのか、日々の生活において何を大切にしているのか、根底の価値観を指しています。長い年月をかけて形成される人格の基盤であり、意志の力で変更を加えるのは困難です。そしてこの「思考」と「信念」を中層で接続させている「パースペクティブ」と「問い」が、発想の質を変える鍵を握っています。

「パースペクティブ」とは、「ものの見方」のことであり、物事を解釈する視点のようなものです。深層にある「信念」に影響されて暗黙のうちに形成された「メガネ」のようなもので、普段はそれを通して世界を捉えていることを忘れてしまいがちですが、ふとしたきっかけでその存在に気がついたり、外れたりすることがあるものです。

そして...

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