日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

疫病と広報史

サンフランシスコ市マスク義務化条例 人々の反応は?

国枝智樹(上智大学)

私たちに大きな影響を与えている「疫病」。海外の疫病にまつわる歴史的な出来事から、現代に通じる「広報」の意義や役割について紐解きます。

マスクの着用は新型コロナウイルスの拡大を阻止する上で効果的とされています。しかし欧米では反マスク運動が展開され注目を集めました。日本でもテレビではスタジオ等でなるべくマスクを使用せず表情を見せています。スペイン風邪が蔓延した100年前もマスクの着用は推奨されましたがなかなか定着せず、全米で初めて着用を義務化したサンフランシスコ市も同様でした。

「マスクをして、命を守りましょう!ガーゼマスクはインフルエンザを99%防ぎます」。これは、サンフランシスコ市がマスク着用を義務化する条例を可決する2日前、1918年10月22日にサンフランシスコ・クロニクル紙に掲載された赤十字の広告。ウイルス99%カットという表現は現在もマスクのパッケージで見る表示です。

当然100年前に現在のような効果の検証方法はなく、マスクの質は低く、正しい着用法も浸透していませんでした。マスク着用条例は必ずしも科学的な根拠のない中で成立したものの、マスクの効果を誇張する表現が頻繁に用いられました。

当時、アメリカは科学や医学、工学の力で社会を改革する革新主義の思想が定着しており、同市の市長も医学の知恵を積極的に政策に反映する方針を掲げました。市長は感染が先に広まりマスクを推奨していた東海岸の都市の取り組みに注目、全米初の条例の可決に成功します。

保健局の協力も得て科学的、医学的な根拠に…

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

疫病と広報史 の記事一覧

サンフランシスコ市マスク義務化条例 人々の反応は?(この記事です)
性感染症予防キャンペーンの効果測定
ポリオ撲滅運動と若者向け広報──プレスリーの予防接種が患者減に貢献
スペイン風邪と広報、歴史からの教訓
スペイン風邪と鉄道マナーポスター

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する