日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

PR視点で読み解く コロナ下のヒット

視聴者をブームの共犯者に巻き込む NiziUに見るファンづくりの手法

境 真良(iU准教授/国際大学GLOCOM客員研究員)

日韓合同オーディションプロジェクト「Nizi Project」で誕生した日本人9人組ガールズグループ「NiziU」。2020年6月のプレデビューから大きなムーブメントを起こしている。どのように話題が広がっていたのか、エンターテインメント産業の研究者が解説する。


新型コロナ対策に追われた2020年、エンタメ界では韓流の風が吹き荒れた一年となりました。その中でも新しいパターンのムーブメントを開拓したものにNiziU、そしてNizi Projectがあります。その新しさは様々ですが、煎じ詰めれば3点に集約できるかと思います。

新しいムーブメントの開拓

まず、K-POPプロジェクトの本格展開を初めて日本で行ったこと。「いや、これまでも展開してきたじゃないか」と言われそうですが、あくまでこれまでは、韓国で開発したK-POPグループの国際展開や、メンバーに日中台などの外国人を入れたということに過ぎませんでした。本来のK-POPグループの開発とは、比較的長期間のオーディション番組でデビュー前に消費者への浸透を図る手法が主流であり、その全体がプロジェクト展開なわけです。

この手法の狙いは、デビュー前に形成したファンの活動と連携し、デビューと同時にYouTube再生回数など、人気ランキングでの上位獲得で話題づくりを行うことにあります。これらはマスメディアにも影響を与えます。そうすることで初期ファンではない消費者に強い印象を与え、浸透をさらに図っていく。ネットワーク効果(*1)、バンドワゴン効果(*2)的な手法で、デビュー時に一気呵成な垂直起ち上げ的成長を狙えます。

*1 ネットワーク効果
*2 バンドワゴン効果
どちらも同じ対象を選択する人が増えるほど対象そのものの効用が高まる現象であり、NiziUを話題にする人が増えるほどNiziUを話題にすることの効用が上がるなど、今回のようなファンが加速度的に増える現象を説明する。

この手法をそのまま日本で行った例は、すでに知名度があったAKBグループとの連携という特殊事例のIZ*ONE除けば、今回のNizi Projectが初めてであったと思います。

このK-POP独特の話題づくりが、2つ目の新しさ、Nizi Projectのメディアパートナーと言える日本テレビの新しいメディア戦略につながっています。テレビ局は、従来であれば、テレビ放送をファーストウィンドウとして、その後、見逃し視聴メディアとしてのネット配信につなげていく流れが不文律でした。

しかし、Nizi Projectのファーストウィンドウはネット配信の「Hulu」であり、それを…

あと62%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

PR視点で読み解く コロナ下のヒット の記事一覧

グミなのにパリッ、「グミッツェル」ウィズコロナのPR
TikTok動画で話題化、試したくなる!排水管の泡洗浄
実体験をもとに発案 懐かしさを演出したPR戦略
「客室内でキャンプ」という新たなプランで 新常態におけるホテルの『日常使い』を提案
視聴者をブームの共犯者に巻き込む NiziUに見るファンづくりの手法(この記事です)
Twitter分析から読み解く『鬼滅の刃』

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する