広報活動には、新しいメディアが積極的に使われています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。
2020年は多くの店舗が休業を要請された一方、ネット通販や動画配信サービスの利用世帯が急増しました。また、多くの企業でテレワークが定着。そこで、社員の連携を促す社内広報においても、あらゆるステークホルダーを対象とした広報活動においても、自社サイトやSNSアカウント、YouTubeチャンネルなど、いわゆる「オウンドメディア」が、一段と重要性を増したようにみえます。
ニューメディアブームの終焉
コロナ禍という未曾有の危機がきっかけとはいえ、多くの企業にとって、こうした変化は悲願でありながら、果たせぬ夢で有り続けていたように思います。
例えば、「ニューメディア」ブームに沸いた1980年代には、高度情報通信システム(Informa tion Network System;INS)の導入による在宅勤務やサテライトオフィスの可能性が喧伝されました。また、多くの企業がキャプテンシステム(ビデオテックス)に情報提供者(Information Provider;IP)として参入し、「ホームショッピング」や「データバンク」などの実用化を目指すとともに、マスメディアが介在しない広報活動のあり方を模索しました。
しかし、バブル経済に支えられた好景気だったにもかかわらず、いずれも不調に終わってしまいました。
技術革新や経済成長だけでは社会のあり方は大きく変わらず、災禍がひとつの画期になるのは、メディア史も例外ではありません。大規模災害に伴う情報の混乱は、新しい技術が国家的な情報基盤として採用されたり、自治体や企業による...