
オンラインでズバリ伝える力
佐藤綾子/著
幻冬舎
192ページ、1200円+税
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本のビジネスも大きく変わった。そのひとつに「オンライン化」がある。今までは先進国の中で遅れていたリモートワークやオンライン会議などが、「3密」が否とされるなかで急速に拡がった。広報担当者は会議、集会、イベント、記者会見など対応に迫られたことだろう。
限られた画面で魅力を伝える
本書の著者、佐藤綾子氏は、表情や動きなどの非言語コミュニケーションを指すパフォーマンス学研究の第一人者。オンライン上で好印象を得、画面越しの対象に正確に「伝える」ためのポイントを1冊にまとめた。
「オンライン上の自己表現は約7割が非言語力で決まります。対面では五感で伝達できていたものが、視覚、聴覚だけに情報量が集中する。つまりそこで印象が左右されるのです。より見た目や表情、話し方などの『パフォーマンス力』が重要となってきます」。
例えば、「フレーム理論」。パフォーマンス学の創始者であるゴッフマンが提唱した理論で、注目させたい部分をフレームに入れその他をぼかすことで相手の印象を操作する考え方だ。特にオンラインではこの理論を意識することが大前提、と佐藤氏は話す。
「あるアメリカのモデルは必ず全身の写真しか撮らせませんでした。足に絶対的な自信があった彼女はフレーム理論を上手に使い、自分を最大限良く見せるブランディングをしていたのです。オンラインでのフレームは画面です。カメラに映る範囲すべてに気を配り、意識的にPRしたいものを目立たせれば、相手から好意と狙ったアクションを得ることができると思います」。
巻き込み話法で引き付ける!
また、「共感」を生み出すためのポイントとして、「インサイドになってもらう言葉や表現を使うこと」も挙げている。社内への発信も、記者会見などでの社外への発信も、「共感」を呼ぶ発信が求められている昨今。オンラインの発信でも共感を得るには、どんな言葉を意識すればいいだろうか。
「例えば主語を“私”ではなく“私たち”、語尾を“します”ではなく“しましょう”などにするだけで、対象の共感度は高まります。アメリカのオバマ元大統領やドイツのメルケル首相はこの話法を上手に使い、支持率を大幅にアップさせました。相手を巻き込むような表現を使うことで、“自分ごと”として捉えられ、聴覚からも相手を画面に集中させることができるのです」。
アフターコロナの情報発信
最後に佐藤氏は「オンラインでのパフォーマンス力を上げることは、リアルでのコミュニケーション力向上にもつながる」と話す。「これから、オンラインとリアルのハイブリッドなコミュニケーションが一般化していくことは間違いありません。オンラインでの少ない情報量で好意的な印象を持たせられるパフォーマンス力が身につけられれば、情報量の多い対面のコミュニケーションになった際にも更なる印象アップが期待できます」。
アフターコロナでは「オンライン」の情報発信が不可欠だ。伝え方のプロでなければならない広報担当者は、より効果的な発信ができるよう、本書で紹介しているオンライン上での「伝え方」のポイントを一つひとつ意識しておきたい。

佐藤綾子(さとう・あやこ)氏
1969年信州大学卒、その後上智大学大学院でMAを取得。ニューヨーク大学パフォーマンス研究学科でMA取得後、日本にパフォーマンス研究を広める。表情や態度などの非言語表現研究の日本の第一人者。日本大学 芸術学部教授を経て、国際パフォーマンス研究所 代表取締役。
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