日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

実践!危機管理広報 リリース・社内フォローほか編

リリース一報はスピードが命! 通常時に広報が準備すべきこと

城島明彦(作家/ジャーナリスト)

不祥事発生時の広報の役割のひとつにお詫びリリースの作成がある。メディア側、企業広報側、どちらも経験してきた著者が両者の視点に立ち、危機下におけるリリース執筆のポイントを解説する。

Q あなたの会社でデータ改ざんが発覚!
お詫びリリースって何を書けばいいの!?

不祥事における記者からの追求にはパターンがある。他社の不祥事における会見上での記者からのQ&Aを参考に、押さえるべきポイントを確認しておこう。それらに対する回答を盛り込んでおけると、早い段階での収束も可能だ。

社内通報などによって不祥事が発覚したら、非常事態に突入だ。ただちに社長直轄の「調査委員会」が設置され、広報はその主要メンバーに組み入れられる。メディア対応を誤ると企業存亡の危機を招くので、広報の役割は重大。不眠不休さえも覚悟する必要がある。非常時に不可欠なのは、①責任者の明確化 ②命令系統の簡略化だ。お詫びリリースを担当する広報はトップと直接やり取りができることは不可欠。むろん、広報部長の了解も必要となってくる。

迅速さが生死を分ける!

企業不祥事でまず目につくのは、初動対応のまずさだ。なにより「迅速が命」を忘れてはならない。時間がたてばたつほど、世間の目は厳しくなる。情報収集に社内外を駆けずり回りながら、「いつお詫びリリースを発表するか」「どういう内容がベストか」を検討し、第一弾のお詫びリリースの素案作成に入るときは、枝葉末節的なことは捨て、根幹となる重要な事実だけに絞って簡潔に記す方針で臨むとよい。

しかし「臭いものにフタ」は許されない。質問されたら何でも答えられるよう、追求は少しの妥協も許すべきではない。その中で、デマや曖昧な事実だけが拡散されないよう、第一弾のお詫びリリースのタイミングまでには社内発表しておくのがいいだろう。

不祥事対応は「時間との戦い」なので早い段階で方法性を固めることが重要だ。素案はいくつかのパターンを用意し、トップに選んでもらう形がベストだろう。不祥事の内容・レベルによっては社長に記者会見を促す必要もある。不祥事に「説明責任」は不可避。特に記者が追求したがるのは、最高責任者であるCEOやCOOの説明責任だ。

会見場は「戦場」であると同時に「懺悔の場」であり、「裁判所」でもある。企業は孤立無援の「被告側」。メディアは多数の「裁判官」。しかも、メディア連合軍に所属する記者の背後には「消費者」「監督省庁」がいる。多数の目に裁かれる場所であることをトップに意識づけできると良い。

不祥事での記者からの追求にもパターンがあり、特に「なぜこれまで気づかなかったのか」「企業ぐるみの犯罪ではないのか」「隠ぺいしてきたのではないのか」「社風に問題があるのではないか」といったことはよく聞かれる。リリースでは機先を制し、それらに対する答えもさらっと入れておきたいものだ(図表1)。

図表1 記者会見のメディアとのQ&Aでよく聞かれるポイント

出所/筆者作成
※本リリースはダミーです

記者目線が重要

“出来のよいリリース”かどうかは記者の尺度で測る必要がある。記者が「一読即解」し、すらすらと記事を作成できる“親切な書き方”かどうかが問われるのだ。私はおびただしい数の「お詫びリリース」に目を通してきたが、一読即解できるものは極めて少なかった。そうならないように、広報は次の点を心掛けたい。

❶何度も読まないと理解できないものは、失格

❷不必要な修飾語、難解な言葉は使わない

❸小学生にも分かるように、分かりやすく、短く、メリハリのついた文章にまとめる

不祥事の実態調査に時間がかかりそうなときは、全貌が判明するのを待ってはいけない。隠ぺいを疑われてしまうからだ。既述のように、第一弾となる「お詫びリリース」はできるだけ...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

実践!危機管理広報 リリース・社内フォローほか編 の記事一覧

飛び道具に頼らない長期的視点が鍵 V字回復企業に見る危機の乗り越え方
「炎上」の本質は人間の業 批判を受けるメカニズムを知ろう
不祥事発覚、「従業員へのフォロー」は、どうすべきか
リリース一報はスピードが命! 通常時に広報が準備すべきこと(この記事です)
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する