2016年、法政大は「大学憲章」を発表し、改めてSDGsの推進を発表した。セブン&アイHDも傘下の事業会社が一丸となってSDGsに取り組めるよう準備を進めている。「SDGs」「大勢の関係者を擁する」の2点で共通する両者に語ってもらった。
理念とSDGsのつながり
田中:法政大学では2016年、「大学憲章」を制定しました。そこには権利を重んじ、多様性を認めあう「自由な学風」と、公正な社会の実現を目指す、という建学以来の精神を明記しています。そのなかにある「地球社会の課題解決に貢献する」は、本学の理念とSDGsの結節点です。
1999年には「環境憲章」という形で、環境問題を大学の目標に据え、地球環境との調和、共存、人間的豊かさの達成を目指すべく取り組んできました。本学は2014年、文科省から「スーパーグローバル大学」に選定されていますが、そこで採択された本学の構想「課題解決先進国日本からサステイナブル社会を構想するグローバル大学の創成」でも、サステイナブル社会が言及されています。
つまり、憲章制定の前から「地球課題の解決」については折に触れ、語っており、憲章にはその想いが“ぎゅっと”凝縮しています。そして、2016年には「ダイバーシティ宣言」、2018年にはSDGs達成に向けた「総長ステイトメント」を発信しました。
釣流:宣言後の学内外の反応はいかがでしたか。
田中:ステイトメントを発信するだけでは変化は起こせませんので、付随する形で各種施策を展開しています。例えば、新たにSDGsの基礎知識を学べる「SDGs入門」というコンテンツを提供。さらに、本学は文理合わせ15学部がありますが、学部横断で既存の授業をよりSDGsに引き付け整理した、「SDGs+プログラム(計721科目)」というのもあります。うち計12単位を修了すると修了証明書を発行します。
こうした各種施策を経て、学内のSDGsの認知度は徐々に上昇。学生・教職員にアンケートを取ったところ、2018年度は70%だったのが、2019年度には90%にまで向上しています。
企業連携では、積水ハウスや大成建設の担当者に、企業のSDGsへの取り組みについて講演いただくこともあります。かつては、企業がSDGsに取り組むのを懐疑的に捉える教員もいました。企業がグローバル市場に進出するために、共通言語であるSDGsを利用しているだけではないか、と。しかし、そうではなく、企業も理念をもって取り組んでいる。このことを正しく理解するためにも、企業との連携は非常に有意義だと思います。
釣流:私たちセブン&アイグループの場合は、「信頼と誠実」を理念としています。それを顧客、取引先、そして当グループの事業会社(セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう・西武など)に、浸透させることが、セブン&アイグループの目標です。
そして、目下の課題は、一緒に働く方々への浸透です。というのも、グループ全体の従業員数は約14万人。サプライチェーンなども含めるとさらに多くの方が当グループと関わりを持っています。従業員そしてサプライチェーンにも「信頼と誠実」を心の底から感じてもらうことが重要だと思っています。店頭に並ぶ商品をつくっている会社、原料をつくっている生産者の方々にも、丁寧なものづくりに励んでいただきたいのです。
──グループ全体への理念浸透にどのような工夫をされていますか。
釣流:当グループの傘下企業は167社。その多くがたまたま近しい理念を掲げていました。
例えば、「毎日の豊かな暮らしを実現する」(セブン-イレブン・ジャパン)、「感謝と奉仕の精神」(そごう・西武)など。そして、事業会社ごとに理想の形は異なります。コンビニはコンビニなりの、百貨店は百貨店なりの、お客さまから望まれている、あるべき姿がある。その要望を無視して、各事業会社が画一的になることを当グループは望みません。むしろ、その姿に沿った“誠実さ”を追求しよう、その連携のジョイントとなったのが2014年に策定したセブン&アイグループの5つの重点課題でした。
これにSDGsを適合させ、グループ全体で取り組んでいます。昨年5月にはグループ共通の環境目標「GREEN CHALLENGE 2050」を発表し、スローガンも定めました。それが「私たちの挑戦で、未来を変えよう。」です。これは、グループ内で案を募って、決めました。1万件近くの応募があり、うち約4000件は加盟店からのものでした。応募期間約は1カ月と短い中で、どれほどの数が集まるのかと不安でしたが...