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リスク広報最前線

伊勢谷逮捕を受けた謝罪文に見る 「信頼回復」ヘの5つのステップ

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2020年9月8日

伊勢谷友介の逮捕を受けて発表されたLoohcs株式会社の発表文の一部。


警視庁は9月8日、東京・目黒区の自宅で乾燥大麻を所持したとして、大麻取締法違反容疑で俳優の伊勢谷友介被告(同罪で起訴済み)を逮捕した。伊勢谷被告は、俳優業の他に通信制高校「Loohcs(ルークス)高等学院」の学長も務めていたことから、同校を運営するLoohcs株式会社はその後、公式ホームページ上で謝罪文を発表した。

9月8日、俳優の伊勢谷友介が自宅で大麻を所持したとして、大麻取締法違反容疑で逮捕され、同月29日には起訴されました。伊勢谷は俳優であると同時にLoohcs(ルークス)株式会社が運営するLoohcs高等学院の学長でもあったため、伊勢谷の逮捕後、同社は謝罪及び学長から解任したことを公表しました。

Loohcs高等学院は学校法人ではありませんが、その広報対応には学校法人も学ぶべきところがあるので、今回はこの件をテーマに学校法人の危機管理広報について検討していきます。

企業同様、学校法人も危機管理が求められる

企業内で不祥事が起きた場合に積極的に公表することは今では一般的な危機管理対応となってきました。一方、学校法人の場合、ここ数年でようやく危機管理広報の意識が芽生えてきた程度、というのが実情であるように思います。一番早かったのは2003年8月に関西学院大の学生が広島市の平和記念公園の折り鶴約14万羽に放火して逮捕された日の夜に同大学の副学長、学部長が記者会見し、翌日には学長が謝罪のために同市を訪問した対応ではないでしょうか。

最近では、東京医大の不正入試問題、日大アメフト部の問題、複数の大学で起きた医学部入試における男女差別問題などがその例です。Loohcs高等学院のリリースも、そうした学校法人も企業と同様に危機管理広報を積極的に行うべきとの流れに位置づけることができるように思います。

「信頼回復」こそが危機管理広報の目的

学校法人の場合、文科省管轄ということもあり、どうしても文科省に守ってもらえる意識や文科省の指示に従って対応すればよいという意識が潜在的にあるように思えます。しかし、危機管理、特に広報の場面においては、この意識はまったく通用しません。

今一度確認すると、危機管理広報の主な目的は「世の中からの信頼回復」、これに尽きます。信頼を回復するための5つのステップとして、①謝罪に加え、②何が起きたのかという事実 ③なぜ起きたのかという原因 ④学校法人として今後どう取り組むのか、という再発防止策...

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