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理念 転換期を乗り越えるコミュニケーション

スープストックトーキョー、丸亀製麺 非常事態下の即対応と企業カルチャー

花摘百江(スープストックトーキョー/スマイルズ)× 南雲克明(トリドールホールディングス)

感染予防対策に休業。非常事態宣言下、飲食店は前代未聞の対応に追われた。企業によって異なる、安全・安心へのアプローチ。その判断には、企業それぞれの志やカルチャーが色濃く反映された。

スープストックトーキョー/スマイルズ 広報 花摘百江氏(左)とトリドールホールディングス マーケティング部長 南雲克明氏(右)。宣伝会議主催の「アドタイ・デイズ 10th Special days」にて対談した。

スープストックトーキョー/スマイルズ

広報体制:広報部長1人、広報担当2人(うち1人はプロジェクトベースでの担当)。全員が親会社スマイルズ社の広報を兼任し2社のコーポレート広報・ブランド広報を担当。PR会社出身が2人、現場(店舗)出身が1人(取材当時)。

トリドールホールディングス

広報体制:トリドールホールディングスと丸亀製麺合わせて約5人。主にコーポレートブランディングとブランドPRの役割に分かれ業務を行う。小売りなどでの広報・PR経験が豊富な社員と外食の広報・PRを長く経験している社員で構成。

コロナ禍の方針、その裏側は

花摘:外食や物販事業を行うスープストックトーキョーは、全国69店舗を展開しています。社員が約200人、アルバイト(パートナー)が約1300人、女性が8割を占めます。「世の中の体温をあげる」を企業理念とし、素材を味わうスープ、空間、ヒトを通してお客様の体温を上げていきたいと考えています。

私自身は対外広報、社内広報のほか、コラボ商品開発や店内配布のリーフレット編集、SNSの中の人、働き方制度の企画などを行い、その実践として複業もしています。

南雲:私は讃岐うどんのチェーン店「丸亀製麺」のブランド戦略、コミュニケーション戦略を担当し、テレビCMや店舗体験に力を注ぐマーケティングを行っています。トリドールホールディングスは、グローバルで1700以上の店舗を展開し、その中で一番多い業態が丸亀製麺。約1050店あります。「Finding New Value. Simply For Your Pleasure.」の経営理念のもと、2025年世界6000店舗、売上5000億円という目標に向け、食の感動につながる新たな価値を追求しています。

花摘:私たちの店舗は、駅ナカや駅直結の商業施設など、人の行き交いの多い場所にあることもふまえ、緊急事態宣言が発令された翌日の4月8日から、全店で1~1カ月半ほど臨時休業しました。新型コロナの前代未聞の事態を受け、社長の松尾は、3月末にWEB社内報で従業員に力強いメッセージを発信しています。

「事態の収束と、関わる人々の健康を、あらゆる経済活動や経営の意思決定の前提とする。会社が潰れないように、事業を継続できるように全力を尽くしつつも、“自分たち”の社会的役割や特性を理解し、自覚して、経済的な理由“だけ”では動かないようにしよう」。そのうえで、全従業員の給料100%補償を発表し、この判断ができたのは「お客様の体温をあげる仕事をし続けている従業員のおかげ」であり「(従業員は)ブランドにとって財産だ」と綴っています。

私たちが考える「おいしい」の一番重要な要素は、安全で安心。そこを確保するために休業という考えに至りました。そのことをお客様に伝えるため、「note」でもこのメッセージを紹介しています。この記事がきっかけで、The New York Timesでも国内企業のBest practiceとしてご紹介いただきました。

南雲:丸亀製麺は、花摘さんのお話とは対照的に、食のインフラであるという自覚から、できる限り店舗を営業する方針をとりました。従業員、アルバイトの方の生活を守る意味もあります。

4月からは「信頼」をキーワードに、しっかりとした感染対策をしたうえでお客さまをお迎えすることを伝えるコミュニケーションに切り替えました。「どこの店が安心して食事ができるのか、その中でおいしいところはどこなのか」という風にお客様は店を選択していくだろうと、仮説を立て、外食チェーンの中でも、いち早く「安心感」を打ち出したCMを流しました。

これまでは...

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