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著者インタビュー

広報も意識したい ロボット・AI時代の生き方

藤原和博氏

10年後、君に仕事はあるのか?
藤原和博/著
筑摩書房
304ページ、800円+税

「10年後の世界」。ロボット・AI社会になっていると予測される世界では、世の中の半数以上の仕事がロボットにとって代わるとされている。しかし、その中でも人間でしか成しえない仕事もある。本書では教育改革実践家である藤原和博氏が2020年代の世界を見通し、仕事が消滅していく社会の中で重要視される考え方、教育法を紹介する。

「新型コロナ感染拡大の影響で一気にデジタル化は進み、受け入れられました。この本で提示した10年先の未来が5年後、3年後の未来になっているのです。この本は次世代の高校生、またその指導者に向けて書いたものですが、実際は現在の社会で活躍する企業人こそが考えるべきことかもしれません」。

次世代に必要な情報編集力

藤原氏が「未来を生きる力」として提唱するのは「情報処理力」と「情報編集力」の2つだ。この2つによってすべてのアイデア、仕事の質が決まるという。「今まで重要視されてきたのが前者。学校教育の中でも4択問題など、ある程度決まった正解を提示された中で“選択” してきた。でも前者はこれから高性能なロボットやAIに、人間よりも圧倒的に正確な処理をされてしまう。これから大切なのは後者です。答えのない問いに対し、どれだけ納得できる解がつくれるか、情報を編集していく力が求められているのです」とする。

この「情報の編集」において必要なのが“遊び” と“戦略性” だ。「イマジネーションを働かせて、納得できる解に近づけるための戦略を立てる。この能力が高ければ高いほど、よりクリエイティブで魅力的なアイデアや仕事が生まれます」。これらは子どもがやる鬼ごっこやゲームなどの“遊び” や“体験” の中から学ぶしかないと藤原氏はいう。

「もちろん子どもの頃にたくさん遊び、様々な経験をすることが一番ですが、大人になってからも遊ぶことを忘れないでほしい。広報担当者はそういった機会を意識的に持つようにすることで、企画力が一段とアップするのではないかと思います」。

多くの選択肢を許容する

藤原氏がもうひとつ主張するのが生き方自体の変化だ。「昔は、事業の寿命と人間の寿命が大体同じくらいだったため、終身雇用で一回だけの仕事人生が保障されてきました。しかし、『人生100年時代』と呼ばれるこれからはひとつの人生では生ききれない。いくつかの人生を重ねていく世代です。生き方も、会社も、キャリアも、多様性を持ち始めました。例えば副業やコミュニティ支援など、多くの選択肢を用意できる会社が求められていくのではないかと思います」。

ロボット・AI時代、ニューノーマルを生き抜いていくためには、会社の外でも生きがいや社会、地域とのつながりを持つことが欠かせないだろう。そのために従業員の外の社会へのモチベーションを上げ、コミュニティ参加などを通じて社会の一員として活動することへの動機付けを図る。その役割を担う広報担当者は、生徒を導く教員に近いのかもしれない。本書は、次世代の採用PRや、これからの社内コミュニケーションに役立つ視点も含まれている。広報担当者も読んでおきたい一冊だ。

藤原和博(ふじはら・かずひろ)氏
東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。広報室/調査部課長、東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1996年同社フェローとなる。教育改革実践家。2003年から5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。奈良市立一条高校・前校長。

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