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元ディレクターが教える テレビ番組制作者の本音

「押しつけ」と「縛り」はNG 通常とは異なる依頼心理を読め!

下矢一良(PR戦略コンサルタント・合同会社ストーリーマネジメント代表)

3カ月近くの時間をかけて取材、制作を行う大型特番では頑なな危機管理の意識はメディア露出の機会損失につながる可能性が高い。コロナ禍で敏感になる時期だからこそ、制作者の意図を知り、柔軟な対応を意識しよう。

各テレビ局の看板ニュース番組で、10月初旬といえば、年末特別番組に向けての準備に取りかかり始めたタイミングだ。年末特番の制作は、番組担当者の中から、何人かが選ばれ、3カ月近くの間その任にあたることになる。年末特番の担当者は、普段の慌ただしい日々の番組取材から離れ、じっくりと腰を据えて、年末まで準備に専念することになる。

私もディレクター時代、2年連続で『WBS』の年末特番を担当した。私は元々、理系出身ということもあって、普段はネット企業や電機業界を中心に取材していた。それゆえその時も、IT・電機業界担当のキャップという役割だった。

だが年末特番では、こうした通常の担当業界の制約を離れ、より俯瞰的にその年を締めくくるにふさわしい企画を考えることができる。年末とは「1年の終わり」であると同時に、「新たな年」を目前に控えたタイミングでもある。それゆえ年末特番の担当者は、その年を総まとめするだけではなく、次の1年に対する示唆を含んだものにもしたいと考えるものだ。「過去を語ることで、未来をも見据える」。大きなテーマだけに、やはり骨太なメッセージを内包している取材対象でなくてはならない。取材者の「時代観」まで問われてしまう。

ただ、2020年に限っては、番組制作者の選択肢は極めて限定的だろう。ここまでの大きな事態があると、年末特番で新型コロナ「以外」を取り上げるという選択肢は、ありえないからだ。また、悩ましいのはコロナ禍が10月の時点で「現在進行形」だという点だ。インフルエンザの流行などと重なり、さらに深刻な事態に陥っているかもしれない。逆に、沈静化し、経済も徐々に回復軌道に乗っているかもしれない。そうした先が全く見通せない状況であっても、取材対象を決め、撮影を進めなくてはならない。

ストーリーを勝手に指定しない

コロナ禍に限らず、このように極めて先行きが不透明な状況で、取材依頼を受けたとき、広報担当者はテレビにどう向き合うべきだろうか。現在進行形の挑戦であるだけに、失敗する可能性も十分ありうる。そのまま放送されれば、「業績不振から抜け出せない、変革力なき会社」という印象を与えかねないと取材を受けることを躊躇する広報担当も多いのではないか。

そんな時に絶対に取るべきでないのは...

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