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リスク広報最前線

自らの正当性を主張するときにも相手への配慮とタイミングの見極めを

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2020年8月10日

今回のケースでいえば、万座亭自体は特に何もしていない。こうした、第三者として巻き込まれたときの危機管理の方法も身に付けておきたい(写真はイメージです)。


群馬県にある温泉旅館「万座亭」の宿泊客が、旅館の食事に関し、とあるツイートを投稿。夕飯の量を「多すぎて到底食べきれない」「シニア層がメインターゲットのはずなので、つまり廃棄前提」などと指摘したものだが、難癖ではないか、と逆に批判を浴びた。

さらに、このツイートを行ったのが、オンラインサロン「田端大学」の公式メディア「BIG WAVE」編集長のよりかね けいいち氏だったことから、田端大学の代表・田端信太郎氏も、「田端大学で請け負った万座温泉の炎上マーケティングだよ」などと被せて投稿し、炎上した。

8月10日、群馬県万座温泉の旅館「万座亭」の宿泊客が投稿したとあるツイートが話題となりました。それは、並べられた夕食の写真とともに「多すぎて到底食べきれない」「シニア層がメインターゲットのはずなので、つまり廃棄前提」など、要するに温泉旅館を批判する投稿でした。

この投稿に対し、逆に「一般的な量である」「写真の撮り方が恣意的だ」など、投稿者に多くの批判が集まりました。それだけでなく、この事案は、その後の投稿者の関係者による投稿によって、さらに炎上、拡大しました。そこで、今回は、この件を題材に、SNSへの投稿が炎上した場合の危機管理広報のあり方を検討します。

信頼回復の一歩は真摯な謝罪から

SNSが普及したことで、写真付きのツイートをきっかけとした投稿者や関係者による炎上例は後を絶ちません。外食チェーン店やコンビニエンスストアのアルバイト社員が不衛生な行動を投稿して炎上した案件や、飲食物に虫のような異物が混入していた際、購入者が写真と企業側の初動を投稿し炎上した案件などが、企業の関わったケースとしては代表的です。

アルバイト社員による投稿や商品への異物混入と企業側の初動対応の拙さによる炎上案件は、企業サイドに炎上の要因があるので、危機管理広報の中心は企業の商品・サービスの利用者である顧客への謝罪を徹底し、顧客からの信頼回復を目指すことに尽きます。

では、今回の万座亭の事例のように、顧客である宿泊者の投稿をきっかけに投稿者が炎上し、企業に火の粉が降ってきた場合はどうすべきでしょうか。

この場合、企業に非はない以上、自らの正当性を主張することに異論はないでしょう。ただ、その場合にも配慮すべき点があります。それは、炎上していることやそのきっかけになった投稿者の気持ちを察する一言を差し込むのです。例えば、「当館でお出しした食事をきっかけにお騒がせする事態を招き、申し訳ございません。」といった...

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