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広報メディア温故知新

「あつまれ どうぶつの森」の巧みな企業利用

飯田 豊(立命館大学)

広報活動には、新しいメディアが積極的に使われています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。

2020年は「放送100年」に当たる年です。アメリカで世界初のラジオ放送局KDKAが誕生したのが1920年。日本では1925年に東京放送局(JOAK)が定時放送を開始しました。

災禍によってメディアの発展の方向性が大きく変わるのはよくあることで、日本の放送制度も例外ではありません。当初はKDKAにならい、民間資本による放送局設立の機運が高まりましたが、1923年の関東大震災によって状況が一変します。災後の流言飛語を抑止できなかったことに対する反省から、それまでラジオの規制に消極的だった政府が、広報メディアとしての有用性に目をつけ、JOAKは商業放送ではなく、非営利の社団法人(後の日本放送協会)として出発することになりました。

コロナ禍においても、メディア環境の変化がめまぐるしいことは、指摘するまでもありません。にわかに台頭した広報メディアとして、真っ先に挙げておかなければならないのは、Nintendo Switchの大ヒットゲーム「あつまれ どうぶつの森」()(以下、「あつ森」と略記)でしょう。

*無人島が舞台のゲーム。プレイヤーは、移住や家の拡張などのため「借金」をし、稼ぐことがゲームにおける重要な要素となる。

3月のリリース後、巣ごもり需要も相まって国内外で人気に火がつくと、香港民主化デモなどを皮切りに、現実の世界でできなくなったことをゲーム内で再現する試みが次々に行なわれています...

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