外出自粛の影響を受け、消費者のソーシャルメディア利用が活発化。ソーシャルリスニングは自社の情報発信を見直す重要な基軸となっている。社会の潮流を上手に捉えるポイントを識者に聞いた。
新型コロナウイルスの感染拡大は、コミュニケーションのオンラインシフトを加速させた。Twitter社は4~6月期の利用者が前年同月比で34%増加したと発表。Facebookの6月の利用者は、前年同月比で12%増加し、各社はこの原因を世界的な外出制限措置にある、としている。
探るオンラインでの顧客接点
顧客と対面して交流することが難しいこのご時世、オンラインでの顧客接点であるソーシャルメディアの活用方法にも新たな工夫が始まっている。北関東に190店舗を展開するスーパーマーケットチェーン「カスミ」では、自社のFacebookページを通じて料理実演のライブ配信を始めた。土屋鞄製造所はコロナ感染拡大を機にInstagramアカウントでインスタライブを開始。スイカを運ぶかばんなど、普段はつくれない、見られない、かばんのつくり方を動画で紹介している。
こうして、様々な企業が新しい顧客との交流方法を見出そうと模索している。また、従業員を登場させることで取り上げられたスタッフのモチベーション維持にも一役買っている。
SNS活用のポイントとは?
令和2年版情報通信白書(総務省)によると「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ことができるメディアとして「インターネット」を上げる人が10~40代までの全ての年代で過半数を超えた。とりわけ10~20代では70%に迫る水準にまで達している。また、オンラインのコミュニケーション手段のなかでも、ソーシャルメディアは10代~20代で圧倒的に利用時間が長く、30~60代でも年々利用時間が増加している。
このような実態であるので、企業がソーシャルメディア上で共感を得られれば、直接企業の評判を高めることにもつながる。反面、悪い評判が広まれば、一層深刻な状況に陥ることになるだろう。実際、近年ネガティブな話題がインターネット上で拡散し、企業活動に影響を及ぼすことも少なくない。
図表1は、2019年から2020年にかけて企業広告が批判された事例の一部である。これらの事案は、すべてソーシャルメディアで話題になった。投稿された内容を読んでゆけば、どのような人が、どのような観点でネガティブな感情を持ったのかが、すぐに分かる。表に示した広告の多くは、公開取り下げや、企業が謝罪リリースを発表する事態に追い込まれている。巨費を投じて折角制作した広告で企業の評判を落としてしまう⋯⋯。制作者にとっても経営者にとっても、大変悲しく、残念なことである。
常識の変化を敏感に察知
このように企業が発信する内容が、人々の価値観に寄り添ったものでなければ、非常識と評価され、痛手を被る事態を招きかねない。しかも、その「常識」は刻々と変化している。「ハラスメント」といえば、21世紀初頭では「パワハラ」か「セクハラ」であった。しかし今や「マタハラ」「モラハラ」「スメハラ」「アルハラ」⋯⋯と、様々なハラスメントと称される単語が誕生している。単語が一時的に発生するだけではなく、テレビドラマのタイトルに使われることも珍しくなくなった。
ハラスメントとは、悩ます(悩まされる)こと、不愉快にさせること、いやがらせ、疲労感、不安感、悩みの種の意を持つ英語である。そのようなことを引き起こす原因など数多あるため、これからも増殖してゆくことは間違いないだろう。批判を受けても主張を通すことも大切な姿勢である。しかし、ハラスメントを肯定しない立場を明示したうえで行動することが重要である。
ソーシャルリスニングのすすめ
これらの「常識」の変化に対処するには...