すみだ水族館の特徴を一言で表すなら、来館者・ユーザーとの距離の“近さ”、と言えよう。それは、例えば館内の展示方法のみならず、SNS発信においても同様の工夫が見て取れる。平時よりユーザーらとの密な交流が、今回の「チンアナゴ顔見せ祭り!」成功の背景にはあった。
顧客との“日常的な”接点づくりを重視するすみだ水族館。それゆえ、ソーシャルメディアを介し、来館していない時でも海の生き物を身近に感じられるよう、積極的な発信に努めている。そんな同館は、休業要請期間中におきた、ある“事態”に対しても、ユーザーの力を借りて乗り越えることができた。その“事態”とは、警戒心の強いチンアナゴが、来館者がいなくなった休館中、砂に潜って顔を出さなくなってしまったことだ。
ユーザーに協力求めた新施策
同館館長の中村雄介氏は、経緯について、こう話す。「当館のチンアナゴにとっては、たくさんのお客さまが水槽前に集まるのが日常でしたが、コロナで、開館以降初めて3カ月半も休館に。人がいない環境が日常になったためか、飼育スタッフが近づくと、砂に潜り、顔を出さなくなってしまったのです」。そこで、ユーザーにチンアナゴが再び人間の顔を思い出してくれるように手伝ってもらおう、と考えたのが、「チンアナゴ顔見せ祭り!」だった。
内容は、2020年5月3~5日の期間中、ビデオ通話アプリのFacetimeを使って、遠隔でチンアナゴにユーザーが顔を見せたり、手を振って呼び掛けたりする、というもの。公式Twitterなどから「助けてください!チンアナゴが人間の存在を忘れはじめています!」と支援を呼びかけた。
同アプリからの着信数は3日間の累計で100万件を超えた。さらに、多くのマスメディアにも取り上げられた他、「チンアナゴ」のワードが、告知日の4月28日から5月5日までの2週間で、2回、Yahoo!リアルタイム検索で1位を獲得した。
「イベントに参加したみなさんから、『久しぶり』『会いに行くね』など、心温まるお声掛けをいただきました。直接来館いただけない時でも、生き物とユーザーの接点をつくりたい、そういう想いで始まった本企画、期待以上のものが得られました」と語る中村氏。同館のTwitterのフォロワー数もイベント期間中に増加。今では20万以上のフォロワー数に上る。
今回の成功の理由について...