顧客との直接のふれあいが難しくなってきたニューノーマルの時代に企業の公式ソーシャルメディアはどのような役割を果たしていくでしょうか。コロナ禍で求められるソーシャルメディア活用法を解説します。
Q1 ニューノーマルにおいて、企業のソーシャルメディア活用は有効ですか?
Always onのコミュニケーションがデマ抑制にも
ニューノーマルにおいて、顧客とのリアルな接点は制限されますが、ソーシャルメディアでは“Always On”のコミュニケーションが可能です。Always Onとは、常にユーザーに寄り添って中長期的なコミュニケーションを図ることを指します。既存の顧客やファンとのエンゲージメントを高める施策などを指すこともあります。
ある新作映画がコロナの影響で、公開延期となった際に「寄付込みのオンライン先行上映会」をスタートしました。Zoomなどを用いて有料配信を行い、売上を上映予定の映画館へ分配するという取り組みですが、公式アカウントでの投稿をきっかけに、映画ファンや業界の中でも話題となりました。物理的・空間的な制限がある中で、創意工夫を凝らした企業の姿勢・また諦めずに発信を続ける企業は、応援されやすい傾向があると感じています。
一方、パンデミックによる社会不安の高まりから、不確かな情報がソーシャルメディア上で拡散しやすくなっています。WHO(世界保健機関)も、この状況を受けて、根拠が不確かで虚偽の情報が溢れ、正確な情報が得難くなる「Infodemic」だと警告しました。同機関では、公式サイトに「Coronavirus disease(COVID-19)advi ce for the public: Mythbusters」というページをつくり、誤情報などを掲載、解説しています。企業のアカウントも、不確かな情報や問い合わせに対して、公式見解を示すことができます。
とある自治体が、特定の成分を含むうがい薬を使ったうがいが、コロナに効果があるとする研究成果を発表しました。報道直後、ソーシャルメディア上では、様々な情報が錯綜する事態となりました。その後、厚生労働省が「特定のうがい薬に含まれる成分が、コロナの増殖が抑制されるという研究結果がみられたが、より確かな証拠を得る研究が必要」という趣旨の発表をしました(2020年8月)。
この時、うがい薬も取り扱う浅田飴の公式Twitterでは、同社にも問い合わせが来たことを投稿。公式アカウントで、事実を端的かつタイムリーに紹介したことで、騒動になる前に収束に向かっていたのではないかと推察されます。浅田飴の過去の投稿をみても、日ごろから、ユーザーのコメントにリプライ(返信)するなど、ソーシャルメディアならではの双方向のコミュニケーションを実践している点も参考になります。
このようにニューノーマルにおいては、企業として信頼性の高い情報・確かな情報をタイムリーに届けること、日ごろからユーザーとのコミュニケーションに積極的であることの重要度が増していると感じます。
Q2 経営者によるソーシャルメディアの活用は、どうなっていくでしょうか?
シェアされやすい状況。経営課題に応じたメディア選定を
オンラインでのコミュニケーションの増加に伴って、ソーシャルメディアでの情報発信は、注目を集めやすい可能性があります。それは経営者の発信に限定されるものではなく、企業アカウントや従業員の個人アカウントでも同様です。
また経営者自身がソーシャルメディア上で積極的なコミュニケーションをする場合もありますが、本人がソーシャルメディアを利用していなくても、企業の活動そのものや、実績などがソーシャルメディアでシェアされ、注目されることもあります。
例えば星野リゾートでは、公式ウェブサイトでコロナ対策に関する「最高水準のコロナ対策宣言」のリリースを出し、丁寧に分かりやすく解説しています。また、これからのツーリズムのあり方として「地域の魅力を再発見し安心安全な旅を両立するマイクロツーリズム」を提唱しており、必ずしもソーシャルメディアに特化した情報発信をしていませんが、こうした発表をきっかけに、様々なメディアで「マイクロツーリズム」という言葉を目にするようになりました。
一方で星野佳路代表のTwitterの活用方法を見ると、コロナ後の指針を中心に語るというよりも、星野リゾートの公式アカウントの投稿の引用や、新聞や経済誌などのインタビュー記事を紹介するにとどまっています。
つまり、どんな情報を誰に届けたいのか、そのために最適なメディアは何が良いかを考えることが重要なのです。経営者が発信するのが効果的といったように、立場だけで利用するかどうかを判断するのではなく...