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元ディレクターが教える テレビ番組制作者の本音

逃げずに自分の強みを発揮 敏腕経営者に学ぶ危機管理とは

下矢一良(PR戦略コンサルタント・合同会社ストーリーマネジメント代表)

コロナ禍で危機管理はより身近な課題になっている。ソフトバンク・孫社長、ジャパネットたかた・髙田前社長の危機対応からテレビ番組においてマイナスな発信を逃れるポイントを学ぶ。

新型コロナウイルスは沈静化する気配を見せない。他局のニュースは当然のこと、経済報道番組である『WBS』ですら、番組の半分以上を新型コロナ関連のニュースに当てることが珍しくない。こうした状況下は、新商品発表など「前向きな、攻めの広報」を繰り広げたとしても、なかなか取り上げられない。それどころか、感染を広げてしまう社員の不用意な行動でもあったりしたら、後ろ向きな謝罪会見にまで追い込まれかねない。

今回は、万が一謝罪会見などに追い込まれたときに、どう振る舞うべきなのか、私がまだテレビ東京の若手ディレクターだった頃に取材した、3人の有名経営者を例に「対テレビ」という観点から考えてみたい。

メディアを圧倒するQ&A

一人目は、ソフトバンクの孫正義社長だ。2000年代前半、ソフトバンクは苦境に立たされていた。新規参入した通信事業で、3年連続で巨額赤字を計上。当時の売上高は4000億円程度であるにもかかわらず、1000億円の赤字を続けて出していた。マスコミが「ソフトバンク倒産危機」と騒ぎ立てるのも、無理からぬことだった。

決算の記者会見では、当然ながら厳しい質問が相次ぐ。参加していたのは、いわゆる「記者クラブ」のメディアだけではない。フリーランスはもとより、赤旗の記者まで300人近くの記者がいる。この当時の孫社長の記者会見での対応は、まさに鬼気迫るものだった。会見の場には財務などの担当役員も臨席しているのだが、どんな専門的な質問であっても、すべて孫社長自身が答えていく。

そうして、300人近い記者の誰からも、手があがらなくなったとき、ようやく記者会見が終わる。逆にいうと、ひとりでも手をあげている記者がいると、終わらないのだ。それゆえ質疑だけで、3時間に達することもあった。「聞きたいことがあるなら、何でも答えてやる。どこからでもかかってこい」。その姿は、記者全員にそう訴えかけているかのように思えた。

質疑を途中で打ち切られると、自分が特段質問したい項目がなかったとしても、どこか逃げられたような感覚を抱いてしまうものだ。だが、このときの孫社長は誰も手をあげなくなるまで、ひとりで答え続ける。そこまでされると、質問する側の方が「勝てなかった」という、奇妙な感じになってしまう。

「以前の見解と微妙に異なるのではないか」。記者会見の文字起こしを後で読んで気づくこともあった。だが...

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