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ネット炎上 予防策と発生時の対応

ソーシャルリスクと炎上対策 絶対やってはいけない広報対応とは?

酒井 信 (明治大学 国際日本学部准教授)

コロナ禍でSNSの使用頻度は高まり、企業にとってもステークホルダーとの重要な接点となっている。しかし使い方や対処によっては、企業存続を揺るがす事態にもなりかねない。SNS上での「炎上」に対する予防、対処方法についてのポイントを識者に聞いた。

新型コロナ禍で在宅勤務をする人が増え、インターネットの利用者が増えています。NTTコミュニケーションズが公表している「インターネットトラフィック(通信量)推移データ」によると、7月20日から1週間のネット接続サービスOCNの通信量は、新型コロナ感染拡大前(2020年2月25日から3月1日)との比較で、平日の昼間で最大で20%の増加、夜間もピーク時で21%も増加しています。

記者も起こす言葉のミス

インターネットの利用者が増えたことで、企業が運営しているSNSアカウントのアクセス数も大幅に増えています。SNSを活用した広報活動は、企業や商品、サービスの認知度を高めたり、そのブランド価値を高めるための手段として、最も安価で手軽なものと言えます。新型コロナ禍をきっかけとして、ネット上の広報活動の善し悪しが企業価値を左右する時代に、本格的に突入したと言っても過言ではありません。

ただ、SNS上の情報は、その内容によっては、企業の存続を揺るがすような「炎上事件」を引き起こすこともあります。例えば、新型コロナウイルスが欧米で蔓延していた3月13日に、朝日新聞の小滝ちひろ編集委員が自身のTwitterに書き込んだ以下の内容が多くの批判を受けました。「あっという間に世界中を席巻し、戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」。

文章の内容は朝日新聞の論調に即したものだと考えることもできます。しかし当時の日本ではまだ感染者が少なかった新型コロナウイルスが、世界中で感染者を増やし、多くの死者を出していたことを考えれば、「痛快」という言葉は明らかに不適切なものでした。このため朝日新聞社は「著しく不適切で、感染した方、亡くなった方のご遺族をはじめ、多くの方々に不快な思いをさせるものだ」として謝罪を余儀なくされます。

日ごろ、言葉遣いに気を遣っている新聞記者でも、Twitter上で炎上事件を引き起こし、新聞社全体の信用を損なうリスクを有しているのです。

「炎上事件」の3段階

もちろん炎上と一口に言っても問題の深刻さにはグラデーションがあります。「炎上事件」とは何か、簡潔に定義すると、「オンライン上の不適切な言動について批判が殺到し、沈静化ができない状態」です。リテラシーを欠いたネット上の書き込みや写真、映像などは、おおよそ図表1の3段階を経て「炎上事件」として、一般社会で広く知られるようになると考えることができます。

    ステップ1

    ネット上で問題のある言動が批判を集め、一部のネットユーザー間で拡散される

    ステップ2

    有名なまとめサイトや掲示板に問題のある言動が転載されて、一般的なネットユーザーの注目を集め、拡散の範囲が広がる

    ステップ3

    問題のある言動が「炎上事例」として、ワイドショーや主要なニュースサイトなどで取り上げられて、ネットをそれほど利用していない人々にも「社会問題」として認知される

図表1「炎上事件」に広がるまでの3ステップ

出所/筆者作成

炎上した情報は匿名で投稿したものであっても、SNS上の友人や関係する組織など紐づいた他の情報から、発信者の実名を特定される場合があります。実名や所属組織などが特定されて、問題のある言動が拡散されると、長期にわたって誹謗中傷がウェブ上に残存し、個人やその所属企業の信用価値が大幅に低下するリスクが高まります。

法律や社内の規定、一般社会の規範やマナーに反する言動をウェブ上にアップロードしないことが、現代的なメディア・リテラシーの基本だと言えます。活字メディアと同様にネット上の広報活動にも「編集」や「校正」の手間をかける必要があるのです。

ホンダの炎上対処法

例えば2018年11月に本田技研工業の販売店「Honda Cars 大阪東花園店」が...

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