日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

IRの学校

アフターコロナの新しいIR様式【後編】

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。新型コロナに対応した新しいビジネス様式、とりわけIRに関する環境を模索している。今日も、オンラインが定着してきた感のある勉強会を始める。



広子東堂:こんばんは。

大森:こんばんは、集まったところで早速始めますか?

広子:はい、お願いします。

大森:そういえば、広子さんたちの会社では、リモートワークの扱いはどう変化したの?

広子:緊急事態宣言も解除されたので、原則、出社となりました。ただし、リモートワークも申請・上長承認で認められています。結構、部署や個人的な仕事内容によってバラバラで、半分ぐらい席が空いている感じですね。これも多様化の一種ですかね。

大森:働き方に選択肢が増えるのは、いずれにしてもいいことだろうね。

東堂:変わったところといえば、会議ですね。どうしても密閉空間になり、熱い議論の末、口角泡を飛ばすとなって、濃厚接触になりがちなので、人数制限が厳しくなっています。部会なのでリモートにする、という逆転現象が発生したり、30分に一度、換気のために中断するので雑談が減って、効率的になったという声も聞こえます。

大森:そうか、「基本、自宅勤務だけど、会議なので出社します」という時代ではないんだね。ところで、出社時にオンラインミーティングは色々試してみたかな?

広子:はい。実際に、いつも取材していただける機関投資家と初めての機関投資家の2組とミーティングしました。

大森:いいねえ。じゃあ、その様子からお聞かせ願おうかな。

オンラインMTGの問題点!?

広子:そうですね、いつもお世話になっている機関投資家の方とは比較的スムーズにお話できたと思うのですが、初めての方の方は反応が薄かったような気がします。

大森:なるほど。横で見ていてどのあたりが原因だと思った?

広子:社長のお決まりの掴みジョークがすべってしまったことが原因ですかね・・・・・・。

大森:おいおい!

広子:冗談はさておき、両者とも同じ説明資料を使っているのに、反応が違ったような気がします。質問もあっさりしていましたし。東堂はどう思った?

東堂:私はリモートで、相手先と同じ目線で参加したのですが、ノートPCの画面では、資料の細部はよく見えませんでした。社長の話ぶりも若干早口で聞き取りづらかった面がありました。電波の関係か、途切れて聞き取れなかった部分もありました。

広子:でも、そのあたりの状況はほぼ同等ですよね。

大森:そうだね。もしかすると、決算発表の後だから、今回のテーマは足元業績の話かな?

広子:そうです。

大森:ああ、なるほど。資料も基本的には決算発表用バージョンで、数字をアップデートしたものかな?

広子:そうですね。

大森:だとすると、担当が長いファンドマネージャーには理解できる内容でも、新しい担当には基礎的なビジネスモデルや御社の数字の見どころ、勘所の理解が足りないので、結果、全体の理解度も低かったのかもしれない。

広子:ああ、そういえばリアルミーティングだと、相手の手が止まっていたり、少し疑問を持たれていたりする様子に気づいて、フォローすることありますね。でも、今回は画面越しだから、そこまで気が回りませんでした。

説明資料と台本の見直し

大森:オッケー。じゃあ、今出た問題点を整理していこう。オンライン用の説明資料の見直し、台本の見直しをすべきだ、ってことだね。

広子:具体的には何ですか?

大森:説明資料の方は、いつも以上に詰め込みすぎず、図表を中心に文字情報は最小限にすることを基本にして、見直そう。そして、補足資料もすぐ提示できるように用意しておくこともね。

東堂:補足資料は、ビジネスモデルや背景数字のトレンドなどでしょうか。

広子:大森さんがよく言う数字の意味付け、評価付けも必要ですよね。

大森:そうだね。話し手と聞き手で共有している、そうした理解の土台みたいなものや暗黙知がないものとして、一度整理し直すといいね。

東堂:なるほど、「プロトコル(約束事)」ってことですね。ところで、見やすくするため、説明資料を先に、お送りしておくというのはどうですか?

大森:そうだね、資料の見やすさには寄与するけど、先読みして注意が散漫にならないような話術も必要になるね。基本的に台本の工夫にも通じるけど、オンラインでは資料のどこを説明しているか、分かりにくいから、「〇ページの“業績推移”のグラフですが・・・・・・」とか「〇ページの図の説明ですが・・・・・・」など、言葉でも補足できるといいだろうね。

東堂:なるほど。では、相手の理解を推し量る工夫は何かできないでしょうか?

大森:説明資料に、質問受付のスライドを入れておいて都度確認するとか、逆にオンラインだからこそできる、チャットなどでリアルタイムに質問を受け付けるのもいいかもしれない。

広子:なるほど。面白いですね。

大森:プレゼンターは確認する暇はないだろうから、事務局や補助者がリアルに反応して、フォローすると良いね。

広子:今度、個人投資家説明会をオンラインで行う予定なので、さっそく試してみます。

大森:質問が質問を呼ぶ可能性もあるから、事務局さん頑張ってね。

広子:個人向け説明会では、気を付けることは他にありますか?

大森:どんなアプリを使うつもりだい?

広子:いつも使用している会議アプリですが。

大森:何人ぐらい参加する予定?

あと61%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

IRの学校 の記事一覧

アフターコロナの新しいIR様式【後編】(この記事です)
アフターコロナの新しいIR様式【前編】
リモート下の決算発表
感染症対応下の株主総会
株価急落へのIR対応
東証の市場改革とは?
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する