新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。
以前、核シェルターのリリースを紹介した七呂建設は全国的にみても先端的なPR活動を行う、広報の見本とすべき鹿児島県の企業です。
同社が、当連載ではほとんど取り上げたことがない、展示会のリリースを配信したので紹介したいと思います。住宅会社の展示会は日本全国で頻繁に催されているため、リリースしてもメディアにはほとんど相手にされない中、同社はテレビや大手新聞の掲載を勝ち取っています。
この「満足度120%の家づくりまるわかりフェスタ」というイベントは、2019年9月に第1弾を開催し、700人以上が来場する盛況でした。そこで早くも2020年2月に第2弾を開催することになったのです。
通常、住宅会社の展示会というと、モデルハウスで自社が販売する物件を中心に数社の住宅関連メーカーを呼び、ファミリー向けの集客策として子供が楽しめる金魚すくいやキャラクターショーなどを実施するイメージですが、七呂建設の企画したイベントはかなり大がかりです。
パナソニックやTOTO、大塚家具などの大手業者もブースを出し、家電や水回り、家具など、会場をくまなく歩けば、家のことが文字通り"まるわかり"できる構成になっています。さらに住宅購入には欠かせないお金や、家庭生活を豊かにする花の専門家がセミナーやワークショップを開き、多角的に「家」を考えられる内容を取り揃えました。
「最大」を意識して準備
さらに同社がこだわったのはイベントの規模。鹿児島アリーナの、大規模なコンサートができるメインアリーナという大会場を使い、46店ものブースを設置しました。これは、第1弾が「県最大」と表示するには微妙な規模だったため、今回ははっきり「最大規模」と表示できる平米数とブース数を意識して準備したのです。何度もお伝えしている通り、「最大」はメディアが取材したくなる要素のひとつです。
PR効果の高い要素を総動員して企画した展示会のリリースを見てみましょう。展示会自体のリリースは事前に出していましたが、今回紹介するリリースはイベントの5日前にメディアを招致するために出したものです。
鹿児島を中心に、福岡、熊本、宮崎の記者クラブと付き合いのあるメディアに配信しました。(ポイント1)まずタイトルに「メディア向けツアー開催」と銘打つことで興味喚起しています。ターゲットは、取材して即記事や番組になる新聞とテレビです。
5社限定としたのは会場の広さと、スタッフがきちんと対応できる人数を考えてのこと。3枚目に出欠の確認票を入れ、「先着順」とすることで呼び込みを図りました。
(ポイント2)消費者が興味を持つ要素は多々ありますが、その中でも3つのコンテンツに絞って訴求しています。あまり要素が多すぎると焦点がボケてしまい、取材の誘致に失敗することが多いのです。
1枚目で3つの項目を箇条書きにし、2枚目でそれぞれの項目を詳しく紹介するという分かりやすい二段構成。項目①は先にも書いた、鹿児島最大規模であることや、鹿児島には初上陸の企業もあることなどを書いています。
②には時事的なメインテーマを設定。オリンピックイヤーに合わせてスポーツを大迫力で見られる「シアタールーム」、現代人特有の悩みだといわれる睡眠不足を解消する「極上の寝室」、消費者はもちろん、メディアが取材したくなる注目の「AI住宅」です。会場にモデルルームを展示し、映像や写真も撮れることが分かります。
③はセミナーとワークショップ。話題を呼んだ『人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社)という本の著者を東京から招いたほか、九州出身でテレビなどにもよく出演している世界的庭園デザイナー・石原和幸氏をゲストに招き、話題性を加味しています...