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広報担当者のための企画書のつくり方入門

いま注目の「アドボカシー」を成功させる企画書とは?

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画が通らない・・・・・・」。そんな悩める人のために、広報の活動別に企画を実現するポイントを伝授。今回は、「アドボカシー」がテーマ。実務経験をもとに必要な視点を整理します。

企業にも求められるアドボカシー活動

アドボカシー(advocacy)という言葉は「擁護」や「支持」を意味する。社会的課題を解決するために社会に働きかけるとともに、社会的弱者の権利などを守るために、彼らの主張を「代弁」する行為としても使われる。

特定非営利活動促進法の施行から20年以上が経ち、日本でもNPO法人が様々な社会問題の解決にチャレンジし、社会を支える時代に入った。だがNPOは対症療法的な活動を行うにとどまるケースも多い。課題があまりに大きくNPOだけでは解決できないからだ。もっとも、今では当たり前のようにNPOは企業や行政と協業している。同じジレンマを抱える民間企業でもアドボカシー活動強化の動きが見られる。

アドボカシー活動には、大きく2つの意味がある。1つは政策提言。社会的弱者の保護や社会問題解決のため、現在の政策を変えるよう行政などに対して直接アプローチする活動のことだ。

日本で直接、政治家に「陳情活動」を行うことは、少々特別な印象を持つ。だが欧米などでは「ロビー活動」として政党や政治家に政策提言を行い、課題解決を促す活動は、民主的プロセスの一貫であり、政治や行政を動かすための一般的な活動とみなされている。ロビー活動は特定の民間企業や業界団体の独自の利益を求めて実施されることが多い。一方のアドボカシー活動はより公益的な視点で行われる活動と考えられている。

もう1つの意味は、社会課題を改善するために、現実に起きている問題を可視化することだ。例えば広報やキャンペーン活動を通じて、多くの人々の知識を深め啓蒙していく活動のことを指す。メディアなどを活用し「啓蒙活動」を行うことで一人ひとりの具体的な行動を促す。特定の政党や政治家だけではなく、世論全体を巻き込むことにより人々の関心を喚起することで政策実現を促すのが一般的だ。

    アドボカシー活動の意味

    ❶政策提言

    ❷社会問題の可視化で世論を巻き込む

視点1
「アドボカシー活動」を行う目的は何か?

企業は商品やサービスを顧客に提供し、対価を顧客から得てビジネスが成り立つ。コミュニケーション活動の目的は、最終的に自社や商品価値を顧客に知ってもらい、購入につなげることである。一方、非営利団体では多くの場合、寄付を行う人には団体の活動メリットが直接還元されない(図1)。ではそれぞれが「アドボカシー活動」を行う目的は何なのか?

図1 民間企業と非営利団体 コミュニケーションの違い

!ありがちな問題点

Ⓐ企業においてアドボカシー活動を行う目的が明確化されていない

私はアドボカシー活動の協力依頼を民間企業から受ける際に、経営者に本当の目的は何か、率直に「本音」を伺うことにしている。目的としてふさわしいのは、企業が「社会の一員として」、より良き社会、公平で豊かな社会、弱者に優しい社会などを共創するというものだ。社会の発展なくしては自社の発展がないことを理解し実践する。実際に心からそう考え実践する経営者も多い。

    民間企業のアドボカシー活動のポイント

    活動の目的、本音は?

    ①何らかの形で自社の商品・サービスの販売拡大、認知拡大に結びつけたいのか?

    ②企業ブランド向上がアドボカシー活動の目的なのか?

    ③社会全体に変革を促すことで「社会の一員」として重要な役割を担っていくことは経営の一環としての活動なのか?

    ④その他(業界団体内部での“お付き合い”など)

    ふさわしいのは③。商品販促か「経営理念に戻づく理想社会の実現」のためか。本音を知った上で広報を。

だが現実として、そこまで企業カルチャーが成熟していないケースも多い。自社の経営課題や業界規制など、特定の問題を今すぐに解決しないと売上が上がらない。だから社会を巻き込む形で政府(行政)を動かしたい、というケースも多い。こうした取り組みも決して悪いものではない。

なぜなら「背に腹はかえられない」とビジネス上の理由から行った行政機関への要望が、その企業がファーストペンギン(生き延びるために敵がいるかもしれない水の中に真っ先に飛び込み生き延びる勇敢なペンギン)となることで実現することがある。結果として業界全体の新しいルールの導入をリードするに至ったケースもある。

Ⓑ非営利組織のアドボカシー活動、誰が支援者なのか不明確

非営利組織では、民間企業のような直接的なメリットを支援者に与えるわけではない。そのため社会活動の「意義」を広く知ってもらい「共感」を得なくてはならない。非営利組織の多くは、問題を抱える「当事者の声」を代弁する形でアドボカシー活動を行う。自分の団体が代表する声は具体的に「誰の声」なのか?団体が掲げる「社会的正義」とは何なのか?これらは団体の理念そのものでもあり、存在理由につながる。理想とする社会の実現を、社会に広く知ってもらうことで、団体への支援が深まる。

    非営利組織の場合の活動の重要ポイント

    「誰の声」を「誰に」伝え世論の形成を行うか?

    ①「誰の声」を代弁するのか?

    ②自分たちはどういう「社会的正義」を掲げているのか?

    ③団体の問題意識に共感してくれるのはどういった人たち(支援者)か?

    ④上記の人たち(支援者)をいかに開拓していくか?

    ⑤どういったメディアが自分たちの主張に関心をもってくれるか?

実際のアドボカシー活動は...

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