ブランディングの戦略からクリエイティブの設計まで総合的にサポートするたき工房。近年、重要視しているのが「パーパス(存在理由)」の共有だ。共感される企画を生み出す、ポイントを解説する。
たき工房はデザインエージェンシーとして、ブランディングの戦略構築やデザインなどクリエイティブに関する支援を行っている。近年注目されているのが「パーパス(存在理由)」を土台にしたブランディングアプローチだ。同社ブランディングプロデューサー・ブランドプランナーの井上元気氏は、コロナ禍で多くの企業が変化を迫られる今、インナーブランディングの本質である「パーパス」の重要性について指摘する。
共感するポイントを見つけ出す
世界の有名企業も次々と導入しているパーパスとは、端的に言うと「今、企業やサービスはなぜ存在するのか」「今、共感される社会的意義とは何か」だ。井上氏は、企業やブランドの“存在理由”と“社会的意義”がパーパスを考える上での重要なキーワードであると言う。
井上氏は、近年パーパスが求められるようになった理由を2つ提示する。1つ目は「環境の変化」だ。デジタルへの急激な移行で、消費志向がモノからコトへと変わり、共感を生むことが重要になったこと。2つ目は、未来を考える上で必要な1990年代後半~2000年生まれの「Z世代の価値観」だ。情報過多の中で過ごし、本当に必要なことを選び抜き、自分ゴト化(共感)することに長けているZ世代にとって、これまで企業を司ってきた概念(企業理念、ビジョンなど)は「自分には関係ない」と共感を生まない可能性がある。
それらの概念をパーパスへと集約し、時代への最適化をする必要がある。「パーパスを通じて、明日何が起こるかわからない不確かな時代を生き抜くための、現在進行形へのトランスフォームが重要な時代になりました」。パーパスを求めていくプロセスは、まず自社が生み出す価値(バリュー)と求められるニーズが交わるところを見つける。その交わったところを環境の変化というフィルターを通してパーパスを導き、共感するポイントを見つけ出していくことが求められる(図1)。
コロナ禍でのパーパスの必要性
セミナー後半は、2019年にたき工房が手掛けた、通信教育講座「進研ゼミ」のパーパス策定プロジェクトについて紹介。進研ゼミのブランドコミュニケーションを担当するベネッセコーポレーションの水上宙士氏が登壇した。
同社は昨年から社長の強い想いのもと、全ブランドでパーパスの議論をはじめた。パーパスを定義したことで社員の意識変化が起こり、ブランドの存在理由や社会的意義を意識した企画を考案する社員が増えたという。新型コロナ感染拡大の影響で、休校の要請がなされた際には、進研ゼミ非会員の小中高校生に向け自宅学習用教材の無償提供を始めた。
「世の中の状況を受けて、必要な人に必要なサービスをすぐに提供する取り組みができたのは、存在意義や存在理由が明確になっていたからでは」と振り返る。パーパス策定のワークショップにおいては、たき工房のデザイナー、コピーライターが参加し、積極的に言葉の具現化、ビジュアライズを行い、パーパスを社員の行動につなげた。コロナ禍のような大きな変化を求められる状況下において、行動指針となるパーパスの重要性が増している。
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