ソーシャル経済メディアのNewsPicksは、企業向け社内メディア「NewsPicks Enterprise」を提供している。企業風土改革の一環として同サービスを導入した東急(株)では、社員同士が対話する機会を増やし、30年後の未来をグループ会社一丸となって考えるプロジェクトを推進している。
会社の未来を長期に見据え、既存の枠組みを超えた新事業を創出するには、縦割り組織に風穴を開け、意欲ある社員を支援し、新事業を真剣に検討するような組織風土が求められる。だが一過性の取組みでは立ち行かない。規模が大きく歴史ある会社ならなおさらだ。
では、どんな方法があるのか。ここでは約1400名の従業員に加え、交通・不動産・生活サービス・ホテルリゾートと232社5法人のグループ会社を持つ東急(株)での取組みと、同社が導入したプラットフォームサービスについて紹介する。
2050年世界が憧れるまちづくり
持続可能なまちづくりを目指す東急(株)は2019年、髙橋和夫社長の肝入りで、30年後の未来を考える組織「フューチャー・デザイン・ラボ」を発足した。「場所と移動」両軸の価値提供で存在感を放ってきた同社だが、満員電車での通勤がテレワークへと移行するなど社会環境の大きな変化に対する危機感がある。
2050年における企業の存在価値から議論し、社員の中に眠る新事業の種を育て、実際に形にするところまで持っていきたい。そんな想いからフューチャー・デザイン・ラボが着手したのは、事業構想論文(A4用紙10枚程度)を社内から募る「未来経営への提言プロジェクト」だった。事業構想を社員の力で考えるコンテストであり未来の芽を育てる試みだ。
この試みでは2019年にニューズピックスと同じくユーザベースグループとなった、企業内の新規事業開発支援を専門とするアルファドライブがプログラムの伴走支援を行った。
「総応募件数は117件。優秀なアイデアは社長にプレゼンをし、循環型社会を見据えた構想がグランプリをとりました。『こんな新規事業をやってみたい』という話ではなく、『未来においてどんな価値提供をする会社にしていくべきか』というレベルの高い要求にもかかわらず、力作が集まりました」とラボの統括部長御代一秀氏は振り返る。
手ごたえを得る一方で、新たな課題も出てきた。若年層の参加率の低さだ。「課長以上の社員に論文の応募を促しましたが、若手に対してはラボが実施していることが伝わっていないな、と思ったんです。30年後の主役である若い人たちに共感してもらえる何かをやらないとまずい。そんな中で、『NewsPicks Enterprise』の存在を知りました」と、御代氏。
社内メディアプラットフォームの「NewsPicks Enterprise」を使えば、社員はスマホアプリからNewsPicksが発信する経済ニュースだけでなく、社内発のニュースも読むことができる。さらにニュースコンテンツに対してはコメントを書いたり「いいね」を押したりとリアクションができる機能もある。
「NewsPicks自体が、若手にとっても吸引力のあるメディアですし、『未来に向けた視座』を与えるニュースを読みながら議論できるのは、私たちの取組みにはうってつけだな、と感じ実験的に導入しました。ラボからは、プロジェクトの進捗を伝えたり、世界が憧れるまちづくりとは何かを問う記事などを配信しています。グループ社員同士がニュースへのコメント付けを行い、縦だけでない横のつながりが生まれています」。
ニュースを軸にした社内交流
NewsPicksのシステムを使った社内コミュニケーションの実証実験には、約300人の社員が参加。4割以上を若手層が占め、反応がしっかり得られたという。また全体の3割はグループ会社の社員が参加している。
「グループ会社が細分化しているからこそ起こっていた業務の分断が、このシステムを導入して2週間で解消されてきた感覚があります。コメントのやりとりを通じて、知の共有がなされ、グループ間の心理的距離が縮まっていますね。
ニュースは会話の糸口になりやすく、会社における立場を問わず活発にコメントが交わされているので、見に来るだけでも価値があります。社内の情報共有だけして議論を促しても、ここまで盛り上がりません。良質なニュース素材を安定供給してもらえるNewsPicksのシステムを導入したからこそ実現できたことだと感じています」。
現在、ラボのメンバー3名と外部協力者が編集部となり、NewsPicks内での社内記事を配信。論文を応募した熱量の高い社員も、積極的にニュースを通じた対話を行っているという。
ニュースを呼び水にした社員同士のインタラクティブなコミュニケーションが、企業風土に新たな変革を起こそうとしている。
お問い合わせ
株式会社ニューズピックス
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