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記者の行動原理を読む広報術

リモート取材は「新常態」に 地方・都市間の格差是正にも貢献

松林 薫(ジャーナリスト)

新型コロナの影響で急速にテレワーク化が進んだ日本社会。それは記者の取材も同様だ。コロナ後、従来の「3現主義」に代わる新たなメディアリレーションズの手法が求められる。

日本は新型コロナの感染爆発こそ免れたものの、大都市では局所的な医療サービスの逼迫が続いている。おそらく今後、政府や自治体が外出自粛要請を解除してからも、変異種による「第2波」を含む断続的な流行は襲ってくるだろう。広報も事態の長期化を前提に体制を見直す必要がありそうだ。

記者が重視する「3現主義」とは

危機が長引く中、記者の間でも長年の慣習が大きく変わりつつある。現場・現物・現人(本人)の取材を重視する「3現主義」もそのひとつだ。取材先の受け入れ拒否や、自社での感染者発生などにより、テレビ会議システムなどを使ったリモート取材が急速に広がっているのである。

もっとも、リモート取材自体は十数年前から始まっており、必ずしも新しい手法ではない。筆者も金融・証券担当をしていた頃には、相手が海外にいる外資系企業の取材ではテレビ電話を使っていたし、証券会社のアナリスト向け説明会もネット開催が増えていた。そもそも、その前から電話取材は一般化していたわけで、広い意味でのリモート取材は定着していたとも言える。

ただし、そうした取材は簡単に会えない場合の「代替手段」という位置付けにすぎなかった。電話取材も、基本的にはすでにお互いをよく知っていて、携帯電話の番号も交換しているような相手が中心だ。もともと日本企業にはフェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを重視する文化があると言われるが、マスコミ業界は特にその傾向が強いのだ。

そう聞くと「古臭い」と感じる人が多いかもしれないが、筆者の経験からすれば致し方ない面もある。実際、現場に足を運んだり、取材先と対面で話したりしなければ得られない情報は、一般の人が想像するよりずっと多いからだ。 

記者も忙しいので、原稿の締め切りが迫ってくると過去記事やネット情報で取材を済ませたい誘惑に駆られることはある。しかし現場に足を運び、自分の目や耳で直接確かめると、不思議なことに必ず「発見」があるものなのだ。通説や事前情報、自分の抱いていたイメージが覆されることも少なくない。記者はそういう体験を繰り返すうちに、自然と「現場を踏みたい」「本人に話を聞かなければ」と思うようになるのだ。

この文化はすぐには理解できないかもしれないが、記者の行動原理の基礎をなしていると言ってもいい。例えば筆者は、10年以上前から医療用の高性能マスク(N95規格)を備蓄していた。厚生労働省クラブに所属していたこともあり、近い将来、致死率の高い強毒性鳥インフルエンザの大流行が起きると考えていたからだ。その後に...

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