メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は明治学院大学の佐藤正晴ゼミにお邪魔しました。
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設立 | 2002年 |
学生数 | 3年生16人、4年生16人 |
OB/OGの主な就職先 | 日本アイ・ビー・エム、KADOKAWA、ポニーキャニオン、ヤング・コミュニケーション、産業経済新聞社、扶桑社、山梨日日新聞社、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、中央労働金庫、損保ジャパン、楽天、松竹 |
明治学院大学は1887年設立の日本最古のキリスト教主義学校「明治学院」を前身とし、1949年に設立された。現在は6学部16学科7研究科を擁し、重松理(ユナイテッドアローズ創業者)、渡部陽一(戦場カメラマン)、SexyZoneの中島健人(ジャニーズ事務所)、TEAMSHACHIの秋本帆華(スターダストプロモーション)など、多種多様な業界に卒業生を輩出していることでも有名だ。
佐藤正晴教授が教鞭をとる社会学部社会学科の特徴は「少人数制」「フィールドワーク主義」であること。「教授と学生とのコミュニケーションも密に取れ、お互いの顔が見えるということでより細やかな教育が可能になっています。また大学での学びはどうしても理論的に偏りがち。しかし今の時代頭でっかちでは社会に受け入れてもらえない。積極的に外に出て、社会の課題を実際に感じ取ってもらうことが重要と考えています」。
感想で終わらせず客観性を重視
佐藤教授の専門は「メディア史」。ゼミ室では「現代のメディア史」をキーワードに社会を紐解いていく。3年次は春学期、秋学期とそれぞれ段階的に課題を設定。まず、春学期では「メディアがつくり出す現代の人気者研究」をテーマにゼミ内でペアをつくり研究を行う。アイドル、歌手、また今はインスタグラマーやユーチューバーなどを研究対象にする学生もいるという。
秋学期は「映画・テレビ番組に関する自由研究」。ひとつの作品を徹底的に分析、最終的にはパワーポイントを使ってゼミ内で発表する。2019年度は『ハウルの動く城』(2004)、『アメトーーク!』(テレビ朝日)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016、TBS)などがテーマとなった。
「ゼミ生にはデータも重要視するように指導しています。『なんとなく感動した』『なんとなく盛り上がったシーン』ではだめ。そのシーンではどんな表現が使われていたのか、実際に他の人が見ても感動するシーンだったのかなど、なるべくあやふやで主観的な考えから客観的に形で示せるようになってもらいたいと考えています」と佐藤教授。4年次には2万文字以上の卒業論文制作が課される。この3年次の分析は、この卒業論文制作につなげる前準備となっているのだ。
夏合宿で動画制作に挑戦
毎年夏休みには学生主導でゼミ合宿を実施している。行き先は、交通アクセスのよい全国の都市の中から決定。2019年度は沖縄県那覇市を訪れた。このゼミ合宿で毎年行われているのが、ショートムービー制作だ。5人程度のグループに分かれ、10分程度の動画を企画・撮影・編集する。テーマは「その土地の魅力を伝える動画」。まちを実際に歩き、自分の目で見て感じたことを表現する。
「ただの印象で終わらせずに、動画という制作物に落とし込むだけで学びは大きく変わってきます。社会学は社会とのつながり。実際にそのまちに足を運び、魅力を探し出すということはすべての研究につながっていくと思います」。
250人以上のゼミ卒業生 多種多様な業界で活躍
佐藤教授はメディア史の中でも20世紀の大衆文化、ポピュラー文化を専門としている。「元々マスコミに強い憧れがありました。しかしメディアの歴史や、作品が国際的に影響を受け合っている背景を知るうちに、制作側よりそれを評価したり研究したりする側に面白さを感じるようになりました」。
2002年から同学で教鞭をとり、ゼミ生は累計250人を超えるという佐藤教授。「たまにOB・OGと一緒に集まる場もあります。卒業生はマスコミ業界をはじめクリエイターや大手商社に就職した人など様々。このつながりこそ私の資産だと思っています。こういったコミュニティを続けていければ嬉しいです」。