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メディアの現場から

日本初60代のファッション誌 雑誌を売ることで市場を広げる

宝島社『素敵なあの人』

報道対応を担当するPRパーソンにとって、気になるのがメディアの裏側。企業取材のスタンスや、プロデューサーや編集長の考えに迫ります。

宝島社『素敵なあの人』編集部DATA
  • 発売:毎月16日
  • 部数:10万部
  • 創刊:2019年9月
  • 美しいグレーヘア(白髪を染めずに活かしたヘアスタイル)が印美象的な、タレント・結城アンナがカバーモデルを務める『素敵なあの人』(宝島社)。

    キャッチコピーに「年を重ねて似合うもの 60代からの大人の装い」を掲げる、60代女性をターゲットとしたファッション誌だ。前身はファッションムックで、2019年9 月に月刊化した。創刊号以来3 号連続で10万部が完売し、以降も好調な売上を持続している。

    誌面ではグレーヘアをはじめとする、自然体をコンセプトとしたファッションや美容情報を紹介。「60代は仕事や子育ても一段落し、自分の好きなファッションを自由に楽しめる世代です」と語るのは編集長の神下敬子氏だ。

    “お茶会”でニーズを調査

    これまで40~60歳代の幅広い年齢層をターゲットにしたファッション誌や健康雑誌はあったが、「“60歳以上”と明確に打ち出しているのはこの雑誌だけです」と神下氏。

    創刊のきっかけは、神下氏が過去に担当していたインテリアムック本の取材で出会った60歳代の女性たちだった。「インテリアはもちろん、彼女たち自身がすごくおしゃれだったんです」。シニアに対するイメージが大きく変わったというこの経験から、60代向けのファッション誌を企画した。

    2017年12月、前身となるファッションムック『素敵なあの人の大人服(大人のおしゃれ手帖特別編集)』が誕生。発売後わずか3日で重版が決定し、その後季刊で発売した計5冊のムック本の売上も好調だったため、月刊化に至った。

    手応えがあったのは部数だけではなかった。神下氏は「発売日の朝から編集部に問い合わせの電話が鳴り止まず、編集部員はずっと電話を受けていました」と振り返る。「こんな雑誌を待っていた! 」という声も多く、「ここには市場があるんだな」と感じたという。

    前例のない「60歳代向けのファッションに特化した雑誌」ということで、徹底したリサーチは欠かせない。神下氏は「私は40歳代なので、人生の先輩である60歳代に響く企画は想像力を働かせてつくるしかありません。だからこそ読者のリアルなニーズを取り入れることを大事にしています」と話す。

    そのため、編集部では、“お茶会” というヒアリングの機会を頻繁に設けている。「60歳代といっても従来のシニアとはセンスが全然違います。お茶会では、彼女たちが実際にどのような洋服を好み、どのような悩みや要望を持っているのかなどを調査しています」と神下氏。

    ヒール靴は登場しない

    誌面づくりにもシニア向けならではの工夫がある...

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