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実践!プレスリリース道場

裏技を商品化でヒット マーナ「トーストスチーマー」のプレスリリースを分析

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

1斤1000円近くもする食パンが飛ぶように売れるなど、パンブームが続いています。

そんな中、陶器を水に濡らして食パンと一緒にトースターに入れるだけで外側はサクッと、内側はフワッとしたトーストが焼けるアイデアグッズ「トーストスチーマー」(2019年1月発売)が人気を呼んでいます。そこで、商品の製造販売をしているマーナを取材しました。

生活雑貨全般を扱い、「おさかなスポンジ」など数々のロングセラーを生み出してきた同社が目をつけたのが、パンブームでした。特に朝食は、ご飯よりもパンで手軽に済ませたいという人が増え、高級食パンのほかスチームトースターも人気を呼んでいます。

一方で、硬くなったパンに霧吹きで水を吹きかけて焼くとふっくらするという裏ワザは昔から行われていました。ただし、ほどよくまんべんなく水分を行き渡らせるのはなかなか難しいもの。同社開発部プロダクトデザイナーの岩崎有里子さんはそこに着目しました。

岩崎さん自身が大学で陶芸を学んでいたこともあり、素材は吸水性のよい陶器を採用。同社はプラスチック製品が多いため、流通に新たな配慮が必要になるなど開発上の苦労もありました。

形も当初は跳び箱のような形状でしたが、使うときの楽しさを考えて食パン型へと変更。料理教室のカリスマ講師からも専門的なアドバイスを受けたといいます。水分量を調整しながら1日に何度もパンを焼いては食べ続け、1年の開発期間を経てようやく完成に至りました。

同社の年度の区切りは7月~翌年6月。営業部広報担当の菊池わか奈さんの元に年間の大まかな新商品情報が届くのは年度初めだそうです。営業部に所属しているため、具体的な情報が入ってくるのは取引先との商談が始まるタイミング。トーストスチーマーのリリースを書き始めたのは、配信の1カ月ほど前でした。

リリースは、ご覧のように1枚きりの極めてシンプルなもの。菊池さんはシリーズ商品の添付資料をつける以外は、基本的に1枚で完結させています。リリースの下段には、ほかに2品のパン関連アイテムを同日リリースしたことが注記してあります。

これらをひとつのリリースにまとめる人もいるかもしれませんが、菊池さんは「1商品1リリース」でいくことに決めているそうです。特にトーストスチーマーは商品が際立っていたこともあり、なおさらでした。あれこれ情報を詰め込みすぎるより、正しい判断だったと思います。

タイトルで商品特性を伝える

タイトルでは「水に浸してパンと一緒にトースターで焼くだけ」と、商品機能を端的に1行で伝えています。最近、私が考えていることのひとつに、(ポイント1)タイトルでどういう商品かをきちんと説明しきることの重要性があります。

これまで伝えてきたように、数字や時事性などメディアが好むキーワードは確かにタイトルに必要ですが、そうした修飾要素に気を配るあまり、どんな商品なのかが分からないタイトルを多く見かけます。まず、どんな商品なのか、そのことだけはしっかり明記するべきでしょう。

(ポイント2)画像では、山型食パンの可愛らしい形状や、パンと一緒にトースターに入れる使用方法がよく分かります。読み手はタイトルと画像を見れば、たった5秒で商品を理解できます。同社では新商品の写真を撮る際、広報に「ほかにどんな画像がほしいですか?」と確認してくれるのだそう。菊池さんは使用シーンや、どんなものがつくれるのか分かる写真を中心に、多めにリクエストするそうです。リリースには全部載せなくても、配信する際に素材として添付しておくと、特にウェブメディアでは重宝します。

この商品を使った場合と使わない場合とを比較した重量のグラフも掲載しています...

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