在宅勤務やテレワークを初めて導入する企業が急増する中、約30社が加盟するTDMテレワーク実行委員会の事例を紹介する。
2020年7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックに向けて、総務省が中心となって企業への導入を推進してきたテレワーク。同省の「通信利用動向調査」(2019年5月31日付)によると、2018年の導入率は19.1%で、前年から5.2ポイント増と大きく伸びた。
2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大によってこの数字は飛躍的に伸びていると推定される。例えば経団連では、3月9日に「加盟社の約7割がテレワークや在宅勤務を実施済みまたは実施予定」という調査結果を発表した。
1日に2~3件の取材依頼
このような動きがある中、2019年7月に、テレワークのノウハウを共有する「TDMテレワーク実行委員会」が発足した。都心の交通需要調整や多様な働き方の実現などを目的として、首都圏のIT企業など約30社が連携する取り組みだ。同年11月には東京都のスムーズビズ推進大賞(推進賞)も受賞している。
委員会は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて活動を進めていたが、新型コロナの影響によるテレワークの急増を受けて、早期にメディア向けの発信を強化。その結果、テレワーク関係の取材依頼が1日に2~3件、毎月3件程度の頻度で講演依頼も来るようになった。
社会の動きに合わせて発信
委員長の長沼史宏氏(アステリア広報・IR室室長)によると、動き出したのは2020年1月上旬ごろ。まずは1月27日に「合同テレワーク体験会」を実施し、全国紙など多くのメディアが取材に訪れた。
2月14日にNTTデータから協力会社の従業員の感染が発表されると、在宅勤務を導入する企業が増加。委員会への問い合わせも増えてきたため、緊急ミーティングを企画した。第1回は2月19日に開催。加盟企業が状況報告を行うとともに、テレワーク利用拡大に向けた課題を共有した。その様子は、NHKのニュース番組でも取り上げられた。
さらに、3月2日に全国で小中学校・高校の臨時休校が始まったことを受け、3月10日に第2回を開催。子どもが在宅する環境でテレワークを行っている加盟企業の従業員らが、現状や課題を共有する場とした。メディアは、NHKやフジテレビ、朝日新聞など約20社が参加した。
広報視点でイベントをつくる
長沼氏は、多くのメディアに注目されている理由について「広報ファーストでイベントを企画できたから」と明かす。委員会の参加者は各企業の広報担当が多いため、各社のPRにもつながるように連携してアイデアを出し合っているのだ。各企業が個別に発信するよりも、連携して発信をしたほうが公益性が高まるので大きな露出につながり社会啓発になる、というメリットもある。
「我々は、テレワークを推進することで社会的なムーブメントをつくりたいと思っています。だからこそ、広報の視点で世の中を見て、メディアにとってタイムリーな時期に今まさに旬な話題を発信していくことを重視しています」と話す。今回も、早期に合同テレワーク体験会を実施したことでメディアとのつながりができ、その後もテレワーク関連の話題で頼られるようになった。
長沼氏は「我々は中小・ベンチャー企業が中心となった草の根的な活動ではありますが、“テレワークの取材ならTDMテレワーク実行委員会”と思ってもらえるように、ポジションを確立していきたい」と展望を述べた。