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コーポレートブランディングカンファレンス2020

事業成長を支えるメディアに 企業の社会的価値を発信

BAKE「THE BAKE MAGAZINE」

2013年創業のBAKEは2015年、いち早くオウンドメディアを立ち上げた。企業認知と現在の事業拡大にもつながったという運営の背景について、社の成長過程とともに時系列を追って紹介した。

製菓業のスタートアップとして、2013年に創業したBAKE(ベイク)。創業から6年で国内外に100店舗以上を出店し、現在はアルバイトスタッフを含めると従業員数は1200人を超える。

知名度ゼロから逆転の発想

同社は「お菓子を、進化させる。」をミッションステートメントに、個性を追求した様々なブランドを展開。

2014年にオープンした焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を皮切りに、シュークリーム専門店「CROQUANTCHOU ZAKUZAKU(クロッカンシュー ザクザク)」、焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」、焼きたてスイートポテトパイ専門店「POGG(ポグ)」、ガトーショコラ専門店「Chocolaphil(ショコラフィル)」といったように、1ブランド1商品にこだわり、6つの専門店業態を運営している。

「ビジネスモデルひとつとっても、すべて逆転の発想が起点。有名パティシエが在籍しているわけでもなく、大手企業が運営しているわけでもない私たちは、知名度もないところからのスタート。そこで強みにしたのが、1ブランド1プロダクトの専門店業態でした。そして、焼きたての商品を提供できる工房一体型の店舗にすることで、商品だけでなく、体験そのものを提供しようと考えました」。

そう語るのは、同社の広報室長を務める北村萌氏。多種多様な商品を並べ、華やかなショーケースを構える一般的なパティスリーとは一線を画すビジネスモデルだが、商品を絞り込むことで味を追求できる。焼きたての提供により商品ロスが発生しないことから効率も高いという。

「BAKE CHEESE TART」「RINGO」など、6つの専門店業態を運営。

失敗談も隠さず積極的に発信

同社が運営する「THE BAKE MAGAZINE」も、このような“逆転の発想”から2015年に生まれたオウンドメディアだ(図1)。

図1 BAKEの考える「逆転の発想」

出所/BAKE

立ち上げ期には、SNSで多くのフォロワーを持つ塩谷舞氏を外部から編集長として迎えた。その発信力を武器に、積極的に自社の情報を公開していった。「名も知れないスタートアップだったので、社内の出来事や商品に対する思い入れなど、純度高く自社の紹介を発信した」という時期だ。

当時は、業界内でオウンドメディアを運営している企業は数えるほど。そんな状況下に、製菓業界でありながらITベンチャー企業のような手法でアプローチしたことで、他社との差別化につながり企業認知も広がった。

BAKEが店舗数を増やし、企業として急成長を遂げた2016年から2017年には、オウンドメディアの発信内容にも変化が見えた。「当時はオウンドメディアとしても成長期に入っていたので、自社ニュースだけではなく、サイエンスやITツール、編集のノウハウといった世のなかの興味関心ごとなども広く発信していました」と北村氏。新たに3人のインハウスエディターが中心となる体制に移行したこともあり、実現した。

さらに、開設当初からアーカイブしていたコンテンツの波及効果が見え始めたのも、この時期。「日々の業務内容などを、失敗談も交えながら発信してきたことが採用広報につながっていきました。社内の働くモチベーションの向上にも寄与したと思います」。

メディア閉鎖も考えた成長期

ところが2017年に入ると、企業が急成長を遂げたことで生じた歪みが徐々に表に出始めたという。「店舗数やブランド数、社員が一気に増えるなかで、『今後どんな企業を目指していくのか』『どんな社会的意義を見出すべきか』などを考えるフェーズに移っていた。しかも菓子はトレンドに波がある業界。商品ブランドに依存するのではなく、企業の輪郭をしっかり描いていく、コーポレートブランディングが必要な時期に差しかかりました」。

急成長による企業ステージの変化とともに、2017年には投資ファンドへの株式譲渡も行われた。経営体制も刷新されて“第二の創業”を迎えるなか、様々な要因が重なったことでオウンドメディアとしての方向転換が迫られていると感じていたという。

折しも、2017年当時は他社のオウンドメディアの閉鎖が目立った時期。「私たちも、体制変更や会社のフェーズが変わったことで、『伝えたいことは何か』とコンテンツに悩んでいた時期。一時期は閉鎖することも考えた」と苦しい時期を振り返る。

結果として「企業規模が大きくなったタイミングだからこそ生まれるコンテンツがある」と考え、オウンドメディアの継続を決定。事業が引き続き急拡大するなか、「一本の記事で社内が同じ方向を向くことができるように」という社内ブランディング効果への期待も込め、インハウスエディター中心の制作ではなく広報室が運用を引き継ぎ、外部エディターとともに発信を続けている。

「共創期」のコンテンツ設計

企業のフェーズとして、現在は“共創期”と位置づけている(図2)。2019年10月からは「THE BAKE MAGAZINE」のコンセプトを“オープンイノベーション”に設定。「保守的な業界を縦にも横にもつなぐコンテンツづくり、『お菓子を、進化させる。』というミッションステートメントを体現したい」という方針のもと、企業として“社会に価値を提供する”フェーズに入ったと考えている。

図2 「THE BAKE MAGAZINE」フェーズごとの運営方針

出所/BAKE

オウンドメディアのコンテンツも、プレスリリースには書ききれないような、商品やブランドが生まれた裏側のストーリーなどを多く取り上げるようになった。

「プレスリリースの内容は事実ベースが多くなってしまう。原材料の調達先や他社とのコラボレーション、デザインの選定、海外ビジネスの展開などに開発者や担当者がどのようなこだわりや思いを持っていて、どのような人々の協力のもと実現しているのかをフォローアップする意味合いもあります」。

自社だけでなく、菓子業界やスタートアップの可能性が広がるような発想を持ち込むことも意識している。例えば“無店舗ビジネス”といったフードイノベーションや、テクノロジーを活用して完全食や保存食といった分野の開拓に取り組む企業を取り上げるなど、業界全体の活性化を視野に入れた情報発信に気を配る。

企業成長と並走するメディアに

「オウンドメディアの運営に行き詰まったときに立ち返る原点になったのが、“可能性を広げる”こと。それはオウンドメディアも企業広報も変わらない。主語が自社や業界、あるいは社会全体でも、その可能性を広げることを念頭に置けば、迷った際にも打開できるのではないか」と投げかける。

企業と並走する存在として、成長ステージに合わせてオウンドメディアも変化を遂げてきた。「今後はコラボレーション先の企業とともに、リアルイベントを開催できたら。菓子業界やスタートアップを活性化させ、オープンイノベーションを切り口に体験の場を提供できるようなオウンドメディアとして育てていきたい」と語った。

BAKE
広報室 室長
北村 萌(きたむら・もえ)氏

海外発のスイーツブランドの広報や事業会社のマーケティングなどを経て、2016年3月BAKEに入社。広報室を立ち上げる。「PRESS BUTTER SAND」「BAKE CHEESE TART」など8ブランドの国内外PRと新ブランドローンチに関するPR活動全般を担当。

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