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大学広報ゼミナール

危機管理広報の備え 部署間での連携を強める

谷ノ内 識(追手門学院大学 総務部広報課 課長)

2018年11月に行ったリスク研修。各部署が対策本部に情報を共有する。

大学にとって毎年2月、3月は学生が旅行や短期留学に出かけることが多い、長期休暇の時期です。教職員数よりもはるかに多い学生一人ひとりの休暇中の行動を把握することは不可能ですが、学生が事件・事故に遭遇すると大学としての対応も必要になってきます。

今回は危機管理広報の中でも、学生に関する問題事案発生後の対応への備えを考えます。SNSの普及に伴い学生が投稿した記事に端を発したネット炎上に対する広報対応も重要ですが、こちらは本誌2017年12月号の対談記事でも触れていますので今回は対象としません。

求められる迅速・正確なメディア対応

大学広報において危機管理広報というのは関心が高いテーマです。他大学の広報担当者に限らず多くの方から「危機管理広報について連載で書いてほしい」という要望をいただきます。ある国立大学の広報課長からは「広報課ができたのは、その当時不祥事が連続して発生してメディア対応が必要になったからだ」とうかがったこともあります。言うまでもなく危機管理広報とメディア対応は密接に関係しています。

2019年10月に開催された日本広報学会第25回研究発表全国大会において、企業広報戦略研究所(電通PR内)が「企業のリスクマネジメントに関する調査報告」を行いました。2019年8月に、20歳から69歳までの全国の男女を対象にインターネットリサーチの手法で3000サンプルを分析しています。

それによると「企業の事件、事故、不祥事の認知経路」で最も高かったのがテレビ番組で91.6%、次いでニュースポータルサイトが43.1%、3番目に新聞記事で39.2%でした。ちなみにSNSは12.3%、雑誌記事は7.9%ですので、依然としてテレビ・新聞の発信力は強いようです。

また、「企業の事件・事故・不祥事を知った際のアクション」で最も多かったのが「信頼しているメディアで事実を確認した」で、「よくある」と「たまにある」を合わせて63.7%。これは「問題を起こした企業のウェブサイト等で発信されている情報を確認した」の「よくある」と「たまにある」を合わせた43.5%を上回っており、世間は当事者の発表よりもメディアによる客観的な報道に注目していることが分かります。

そして「事件・事故・不祥事を起こした企業に求める情報開示」について50%を超えた項目は「迅速な情報開示」で69.6%、「開示内容の正確さ」が68.0%、「疑問・不安への的確な回答」が56.7%でした(図表1)。問題発生後の危機管理広報は、メディア対応を柱に迅速かつ正確な情報開示ができるかが問われます。そこで重要になってくるのが普段からの備えです …

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