新型肺炎の流行に伴い、不況モードへの突入が懸念される日本。ネガティブな発表や批判的な記事が多くなることが予想されるため、広報は、企業イメージのダメージコントロールが必要になる。
2019年半ばから、企業経営者の団体などに呼ばれて日本経済の先行きについて講演する機会が増えた。消費増税や米中貿易摩擦などを受けて、景気の先行きに不安が広がっているからだろう。
2020年は、夏の東京五輪で個人消費やインバウンドが盛り上がり、落ち込みを和らげるはずだった。ところがそれも、「新型肺炎」の騒ぎで一気に雲行きが怪しくなっている。このまま不況モードに突入すると、企業広報のテーマも大きく変わるかもしれない。
すでに景気は下り坂だが、それまでの拡張期は73カ月を超えて戦後最長になった可能性が高い。それほど長く続くと、不況の真っ只中で広報を担当したことがある人は減っているはずだ。
「百年に一度」といわれた2008年の米リーマン・ショックを、社会人として経験していない人も多いだろう。今回はそういう人のために、不況期の取材活動について時系列で解説しよう。
決算も広報戦略の一環
景気の落ち込みが加速してくると、経済記者が追いかけるテーマも後ろ向きなものになってくる。まず焦点になるのは景気悪化の原因と、その直接的な影響だ。
過去の例で言えば、バブル崩壊やリーマン・ブラザーズの破綻などがこれに当たる。2020年は、新型肺炎が国内で流行し始めれば、旅行業界などへの打撃が注目を集めるはずだ。
記者の立場から広報を見てきた経験から言えば、こうした取材への対応は「平時」の延長でこなせる。後ろ向きな内容ではあるが、悪影響を受けているのは業界全体だからだ。記者や世間も「不可抗力」と受け止めるので、記事が批判的なトーンになることも少ない。
しかし、そうした影響が決算に表れ始めると、広報対応の難易度が上がる。同業他社と数字で比べることができるので、仮に業績の落ち込みが大きいと、投資家などに対する説明責任が生じるからだ。赤字に転落したり、大きな損失が発生したりすると、記者もその理由を詳しく知ろうとする。その際に、経営陣が責任を回避しようと曖昧な説明をすれば、追及はかえって厳しくなるので注意が必要だ …