複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2020年1月15日

東京大学本郷キャンパスの赤門(東京・文京)。
東京大学はこの日、Twitterへの差別的な投稿などを理由に、大澤昇平特任准教授を同日付で懲戒解雇したと発表した。大澤氏はAI制作プラットフォームの開発などを行うDaisy(東京・千代田)の代表取締役CEOでもあり、2019年11月に「弊社Daisyでは中国人は採用しません」などとツイートして問題に。
その後「特定国籍の人々の能力に関する当社の判断は、限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である『過学習』によるものです」などと釈明し、さらに炎上していた。
東京大学は2020年1月15日、Twitter上での国籍または民族を理由とする差別的な投稿などを事実として認定し、大澤昇平特任准教授を懲戒解雇したことを公表しました。川崎市が2019年12月にヘイトスピーチ禁止条例を可決するなど、国内では近年、差別的言動を抑制する動きが目立っています。ただ、東京大学のように「懲戒解雇」の処分を下したり、川崎市のように自治体が条例を制定したりすることは、表現の自由と対立することにもつながります。
本件の場合は特に、いち従業員がプライベートで行ったSNSへの投稿を処分対象としているため、過度の干渉に当たる恐れもあります …
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