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記者の行動原理を読む広報術

新任広報に報道対応の基本を伝授

松林 薫(ジャーナリスト)

メディアを介して間接的に情報を伝える広報の仕事。新任広報には、記者がどのように「ニュース価値」を判断しているかを3つのステップで体験学習してもらうのが効果的だ。

年が明けると、来年度に向けた準備が本格化する。筆者のもとにも、新人研修に関する相談が舞い込み始めた。今回は、筆者が広報向けの研修会などで実施しているメニューを紹介したい。

本文から見出しを予想する

広報にとって最も大事なのは、心の片隅に「記者の視点」を持つことだ。そもそも広報の仕事の特殊性は、メディアという利害が異なる第三者を介して間接的に情報を伝える点にある。

研修でも、まずこの点を意識させることが重要になる。ただ、座学でそれを教えるのは困難だ。最終的には現場でメディアと付き合いながら体得するしかないが、研修で学ぶならロールプレイングが効果的だろう。

もっとも、新任者が1~2人だとあまり手間はかけられない。そういう場合に手頃なのが「リリースの処理体験」だ。ネットなどで公開されている他社の報道資料を読んで、新聞記者になったつもりで記事を書いてみるのである。

ロールプレイングに話を戻そう。第一段階では、新聞記事の本文だけ読ませて「見出し」を予想させる。新聞社であれば紙面のレイアウトなどを担当する「整理記者」が行っている作業を疑似体験するわけだ。この練習を通じて、見出しの「型」や、記事の中でどの部分をクローズアップするのかを学ぶことができる。

この練習は少しやればかなりの確率で「正解」が出せるようになる。新聞の見出しは原則として本文の一部を抜き出してつくるので、その法則に気づけば国語のテストと同じ要領で「解ける」のだ。

記者が重要だと考える情報は

一定の回数をこなしたら、第二段階に進む。プレスリリースを読んで「それが記事化された時にどんな見出しが付くか」を予想させるのだ。これは、取材記者が「仮見出し」を考える作業にあたる。仮見出しとは、記者が本文を書く前に、その内容を一言で要約して付ける見出しのことだ。最終的に読者が目にする見出しは整理記者が付けるので、区別するためにこう呼んでいるのである。

リリースはネットを検索すれば手に入る。例えば日本経済新聞のサイトには、業種や日付、キーワードを指定して探せるコーナーがある。そこで1週間以内に発表され、記事化されたリリースをピックアップし、新任者に「紙面ではどんな見出しが付いたか」を考えさせるのだ …

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