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IRの学校

東証の市場構造改革への対応

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。東証が市場区分を3市場に集約するというニュースを受け、IR担当者としての対応を検討しているところだ。



広子:こんばんは。

大森:こんばんは。前回のIR担当者の会合は飲み会メインの集会だったらしいね。

広子:新年度に向けてメンバーそれぞれの決意を語り合いましたよ!

大森:そういう建前の大宴会だったんじゃない?

広子:あくまで、勉強会ですから。情報交換が主体ですよ?

大森:まあそういうものですな。

市場改革でIRはどう変わる?

東堂:突然ですけど、年末年始にかけて、東証の市場構造の改革について、ニュースが流れていましたが、大森さんはどうお考えですか?

大森:現在は5つ(一部、二部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロース)ある市場区分がプライム、スタンダード、グロース(いずれも仮称)の3区分になるという話だね。

東堂:はい。その会合で、前年にマザーズから東証一部へ指定替えをした会社の方が、「基準にかかる可能性もあって、動向を見守っている」とおっしゃっていて。

大森:なるほど、確かにIRとも関係性が高い話題だね。

広子:まあ、市場の指定替えは当社にはまだ先の話だと思っていましたが。改革後、現在の一部にあたるであろうプライム市場を狙うのはまだ先としても、スタンダード市場になるか、グロース市場になるか、検討しなくては……。

大森:そうだね。既存の上場企業はそれぞれの市場のコンセプトに、自社の経営理念、成長のステージ、コーポレートガバナンスの状況を照らして、自主的に適切な市場を選択できることを目指している、と伝えられているね。

東堂:私が知っている範囲では、"流通時価総額"という新たな概念が導入されるとか。

大森:新概念というほどではないけど、単純な時価総額が基準ではなくなる、ということだね。

広子:どう違うんですか?浮動株と近い?

東堂:そうそう。流通時価総額は大株主や役員、自己などの所有割合を減らして計算されますよね?

大森:だいたい合っているけど、大株主ではなく、主要株主ね。主要株主でも投信や信託に組み込まれている分などは流通株式として認識されるよ。

広子:細かいなあ。でも、オーナー企業である当社は不利になりますね。

大森:そうなるね。元々上場基準には流通株式の比率が含まれるから、オーナーなど主要株主の持株比率は現状も新制度後も、重要な資本政策のテーマだね。

広子:流通株式というか、流通時価総額に着目するのはなぜですか?

東堂:それに、そもそも市場改革を行う理由って何ですか?

大森:それでは、市場構造の改革の背景などを整理していこう。

市場構造改革の目的

大森:一連の報道を見ていると、一定の投資家保護を担保しつつ、コーポレートガバナンスも業容も一流である「プライム市場」を頂点にした市場構造というのが目指す方向性だろうと思う。

広子:それは理解できます。

大森:まず、現在の市場構造の原型ができたころから考えると、市場の合併・統合が進んで、東証に当初2つだった市場区分が5つに増えたことがひとつの要因。

広子:さすが昔話は得意ですねえ。

大森:ごほん。で、5つある区分の中には同じようなコンセプトの市場もある。マザーズとJASDAQグロース、東証二部とJASDAQスタンダードだね。コンセプトに明確な差異がないので、投資家が困惑しているというもの。

広子:困惑といっても、そこは個別銘柄で検討するんじゃないですか。

大森:そうだね。でも、例えばグロース投資の投資信託があった場合、ベンチマークとしては「マザーズ指数」と「JASDAQグロース指数」のどちらが適切か、なんて明確にしづらくないかい。

広子:なるほど。上場基準を厳しくして、一部上場の企業数を絞ることも目的のひとつと聞きますが …

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